五輪のせいで“カフェに柵”… 現地民が嘆く「パリ脱出」ヴァカンス事情

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ヴァカンスを「諦めた人たち」

 その一方で、ヴァカンスを諦めた人たちもいた。

 パン屋を営む日本人のYさん家族は、日本への帰国ヴァカンスを断念し、年末年始に繰り越すことにしたという。理由は五輪開催による航空券の高騰。子供が3人いると、予算がなかなか厳しいらしい。

 アルジェリア人のSさん家族も、ヴァカンスに母国へ帰ろうと思っていた。コロナ禍が明けたのでようやく……と思っていたが、やはりオリンピックのため航空券が値上がり、断念したという。

 ヴァカンスの時期をずらした人もいる。イラン人の美容師Mさん夫婦は、オリンピック期間を含めたヴァカンスを航空券の値上げから断念した。9月に予定されている親戚の結婚式に合わせ、8月末からヴァカンスを取ることにしたと語っていた。オリンピックが始まれば、市民は街からいなくなるため、本当ならば店を閉めたいというのが本音。家から店まで徒歩で行ける距離のため、交通規制などとは無縁ですごせることは不幸中の幸いだと言っていた。

 とはいえパリに残ることを決めた人々も、勇んで開会式や競技会場へ出かける気分にはなっていないようだ。自宅のテレビで鑑賞するといった意見が大半だった。

我が家の事情は

 さて、我が家──。コロナ禍を除いては、日本へ帰るのがお決まりの夏のヴァカンスの予定だった。しかし、今年のパリ五輪を逃せば、おそらく一生、生で観戦する機会はないだろう。パリに留まるか、いままで通りのヴァカンスを楽しむか……悩んだ挙句、パリに留まろうと思った。そして五輪のチケットを購入しようと試みたものの、思わぬ高値に驚いた。人気競技を家族で観に行くとなると、それこそヴァカンス費用に匹敵する額なのだ。24ユーロ(約4,000円)の安値チケットもあるにはあったが、パリ外の会場のため、観戦へ出かけるのは現実的に難しかった。

では、日本へ帰国するか……。だが航空券は高騰し、安値の時期と比べればざっくり倍の値段になっている。それに、日本では猛暑が年々ひどくなっているとも聞いている。パリに留まっても、日本に帰国しても、ネガティヴな要素ばかりが並び、数ヶ月悩んだ。

 決め手は円安だった――大学生の息子が1ヶ月半のアルバイトで貯めたお金を円に換算すると、日本の平均初任給の倍以上にもなっている。実はパリにとどまって五輪を楽しみたいというのは私だけで、息子も夫もヴァカンスを日本で過ごしたいという思いが強かった。ということで、日本でパリからの五輪中継を観るつもりだ。

奥永恭子(パリ在住ライター)

デイリー新潮編集部

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