日テレが「若草物語」放送へ 「セクシー田中さん」問題が影響か…ドラマ化で注目される「著作者人格権」
古典文学ドラマ化の長所
古典文学の魅力は、時代を超えて変わらない人間の本質に迫っているところ。また、誰もが作品、あるいは作者を知っていて、前宣伝が自然と出来るところも制作者側には魅力だろう。
近年は古典文学の連ドラ化が激減したが、それでも2013年には同じロシアの文豪・ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」をフジが連ドラ化した。斉藤工(42)、市原隼人(37)、林遣都(33)が3兄弟に扮し、家族内の独裁者である父親を吉田鋼太郎(65)が演じた。かなり大胆な改変が施されていたものの、著作権が消滅しているので問題は生じなかった。
著作権と著作者人格権は作者の権利であるのみならず、財産でもある。一方で一定期間が経過した著作物は社会の共有財産として自由に利用できるようにすべきだという考え方も国内外にある。このため、著作権は無期限ではない。だからネット上には著作権の切れた国内外の古典文学を集めたサイトが存在する。
また、「セクシー田中さん」問題の後、誤解が広まっているが、改変そのものが悪いわけではない。責められるのは作者サイドが同意していない改変だ。あらかじめ「自由に改変してくれ」と言う作者もいる。
現在放送中のTBS「笑うマトリョーシカ」(金曜午後10時)も登場人物たちの置かれた立場に原作との相違点が目立つが、作者の早見和真氏(47)が納得していたら、問題ない。
大ヒットしたTBS「半沢直樹」(2013、2020年)も池井戸潤氏(61)による原作小説『オレたちバブル入行組』をかなり改変している。原作は半沢直樹(堺雅人)ら若手行員による群像劇の色合いが強い。
「若草物語」の成否のカギを握っているのも改変に違いない。原作はこうだ。
牧師のマーチ氏は高潔な知識人だが、裕福ではないは。マーチ氏には4人の娘がいた。まず長女のメグ。温厚だが、虚栄心がやや強い。将来は裕福な男性と結婚し、豊かな生活を送りたいと考えている。次女のジョーは勝ち気で独立心が旺盛。作家になることを夢見ている。作者のオルコット自身のことである。
三女のベスは内気。音楽を愛し、ピアノを弾く。献身的で清らかな人物である。四女のエイミーは気取り屋でわがままなところがある。画家になることを夢見ていた。
マーチ氏が南北戦争の従軍牧師として戦地に赴いたため、4姉妹は母親と暮らしている。その中での感動エピソードが書かれている。
姉妹愛、親子愛、隣人愛がつづられた物語だ。連ドラ化に歓喜するかつての少女は多いのではないか。
堀田真由の連ドラの主演はテレビ朝日系「たとえあなたを忘れても」(2023年)に次いでまだ2作目だが、演技力の高さは若手の中で屈指と評判。不安はない。
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