「片足を母犬に食われた犬を生きたままゴミ箱に…」埼玉81歳ブリーダーの残虐非道を放置した行政とオークション業者、大手ペットショップの責任
「指導は適切に行われていた」
指導の上には「勧告」「命令」「営業停止処分」「登録取消」があるが、12回も指導だけを繰り返してきたというのである。なぜ勧告以上に進まなかったのかと聞くと、
「指導する度に改善されたからです。指導は適切に行われてきたと考えている」
しかも、6月24日に行われた12回目の指導で「指導は完了した」と答えたのである。だが、同日にAの娘は廃業届を県に提出、3日後の27日、Aは埼玉県警に動物愛護法違反容疑で逮捕された。
なぜ指導が完了したのに廃業届を出すことになったのかと聞くと、
「おそらくA氏は警察の動きを知っていて、このままでは営業できないと判断したからではないか」
現在、残っている犬たちをどうするつもりかとの質問には、
「順次、県が引き取って動物愛護団体に引き渡していく予定ですでに進められている」と答えるのだが、今何頭残っており、いつ頃に完了するか聞いても、
「お答えできない。ただ保健所が立ち入って犬たちの健康状態について随時把握しており、今のところ問題は発生していない」
こうした事態を放置した責任を感じていないかという質問には「お答えできない」。過去について調べるつもりはないのかと聞いても「今のところその予定はない」と答えた。
オークション業者は「保健所の職権を強化すべき」
Aの犬を購入し、競りにかけてペットショップに卸してきたオークション業者はどう考えているのか。日本にある主なペットオークション業者は「プリペット株式会社」と「一般社団法人ペットパーク流通協会」の2社だけだ。
プリペットは前述した通りAが最初に登録した2007年から取引があったといい、取引数は「0~3頭の出品頻度」だったと書面で回答した。
事件についての見解を問うと次のように回答した。
〈今回の報道を受けてスタッフも大変ショックを受けており、小さな命をお預かりするオークションとしては、許し難い重大な問題であると認識しております。
Aの件は、今までに虐待の話も聞いたことがなく、もしそのような通報、噂があった場合は、社員が直ちにブリーダーの犬舎を調査、確認した上で、保健所への連絡、弊社との取引停止まで踏み込んだ処分をしていたはずです。
今回のような事件の再発防止に一番効果がある方法は、動物管理法では保健所が問題のあるブリーダーに対して立入検査や動物取扱業者登録の取消等の権限を持っていますので、その職権の運用強化を図る事で目覚ましい効果が上がるはずです。
全国の保健所は、コロナが収まった事で、人員の余裕があると思います。全国にある保健所が全国のブリーダーを訪問、飼育状況の確認を今以上に人員を増やして行い、問題のあるブリーダーの摘発に乗り出せば、今回のような問題は激減すると思います〉
もう一つのペットパーク流通協会は、
〈当該ブリーダーとの取引についてペットパーク流通協会では取引がございませんでした。また、ペットパーク流通協会非加盟オークションでの取引については把握しておりません〉
と回答した。
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