三浦春馬さんはなぜ「陰謀論のシンボル」にされたのか 他の陰謀論と毛色が違うポイントも
“殺されてないのに何を調べるの”
俳優の三浦春馬さんが東京都内の自宅マンションで首をつり、30歳の若さでこの世を去ったのは2020年7月18日。悲劇から4年がたったわけだが、現在、三浦さんの名は妙な「使われ方」をしている。なぜか「陰謀論」のシンボルになっているのだ。【前後編の後編】
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【レア写真】サーフボードを片手に少年のような笑顔を見せる三浦春馬さん
「三浦春馬現象」はどのようにして陰謀論と結び付いていったのか。自殺直後からその萌芽はあったようで、
「春馬が亡くなった直後から私のところには1日数百件ものファンからの電話がかかってきました。そのうち“他殺だ”と訴えている人は3割くらいでした」
と、三浦さんのサーフィンの師匠で、現在も三浦さんのファンと交流している「茨城元気計画」代表の卯都木睦(うつぎあつし)氏は言う。
「“調べて下さい”などと言ってくるのですが、私としては“殺されてないのに何を調べるの”としか言いようがない。他殺説を主張してくる人の中では、春馬が関わっていたラオスの募金活動で、帳簿を見て不正を知ってしまったので殺された、と訴えてくるケースが多かったですね」
陰謀論ウォッチャーの山崎リュウキチ氏はこう話す。
「三浦さんが亡くなった直後、まず、アミューズが死の真相を隠蔽(いんぺい)している、という『三浦春馬陰謀論』が都市伝説として自然形成されました。芸能人に関するこうしたうわさが広まるのは、往々にしてあることです。しかしその後の20年9月ごろ、Qアノン系の陰謀論インフルエンサーが三浦春馬陰謀論を取り上げ、Qアノンと三浦春馬陰謀論が結び付きました」
Qアノン以外のさまざまな陰謀論と結び付くように
Qアノンとは、「世界はディープステート(影の政府)に支配されている」といった陰謀論を信じる人々のこと。アメリカだけで数百万人いるとされる。そのQアノンが、先に触れた「ラオスの募金活動」などを行っていた団体「Act Against AIDS」(AAA)に注目したことで、事態はさらに複雑になっていったという。
「『AAAから安倍晋三元総理に不正な送金があり、それを知った三浦春馬は暗殺された』といった根も葉もない風説が出回り始めたのです。その結果、『安倍晋三』をハブにして、Qアノン以外のさまざまな政治陰謀論と結び付いていきました。また、20年11月の米大統領選後に行われた日本版Qアノンのデモには、『I LOVE 三浦春馬I LOVE TRUMP』というプラカードを掲げる参加者が出現しました」(同)
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