連続幼女誘拐殺人「宮崎勤」は独居房で幼児の写真集を眺めていた 元受刑者が見た“確定死刑囚”の知られざる日常

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宮崎勤は太り、ハゲていた

 そんな独房生活を送る中、もう1人、“超有名人”がいることに気づいたという。東京や埼玉で幼女4人を殺害した宮崎勤死刑囚だ。日に1回ある屋上での運動の時間にも宮崎は房の外に出ることはなく、だからなのか、太っていて肌は白かったという。メガネをかけ頭髪はかなり薄く、ハゲているように見えたという。

「夏は週に3回、冬場は週2回の入浴がある。担当台の近くに浴室が4つ並んでいて、みな順番待ちで並ぶのですが、そこで見かけてすぐに宮崎だとわかりました。“あ、宮崎だ”と思い彼をじっと見ていると、刑務官に“バカを相手にするな”と注意されてしまいました」(大岩氏)

俺の骨がない、なんでやー

 拘置所では2週間に3冊まで雑誌や書籍を所持金の範囲内で買うことができる。宮崎がよく購入していたのは、幼児専門の写真集のようなものが多かった。それを食い入るように眺めてニタニタしていることがしばしばあり、気色悪かったと大岩氏は振り返る。

 ほかに、差し入れや自費購入で、宮崎のお気に入りだったものに、鳥の手羽先を煮込んだ缶詰があった。それを宮崎は、しゃぶり尽くすようにして食し、食べ終わるとその骨を、壁と畳の角に丁寧に等間隔で並べていたという。

「まるで宝物のように丁寧に扱い、これも気色悪かったですね。あるとき、宮崎が弁護士との面会で部屋を空けていたとき、掃夫がその骨を片付けてしまったんです。面会を終え部屋に戻るとすぐ、大切にしていた骨がないことに気づいた宮崎は、“俺の骨がない。なんでだー。どこへやったんだ”と興奮して騒ぎ、そして暴れ始めた。その様子は尋常ではないほどで、ちょっと恐怖を感じました。宮崎には、骨に異常なほどの執着があったようです。結局、刑務官が笛を吹いて異常を知らせ、すぐに20人ほどの刑務官が駆けつけ取り押さえていました」(大岩氏)

いまが一番大切なので

 当時ほかに、連続企業爆破事件の大道寺将司(2017年5月、獄中で病死)やオウム真理教事件の幹部だった土屋正実(2018年7月死刑執行)、新實智光(2018年7月死刑執行)らの死刑囚のほか、薬物事件で人気ロックグループのミュージシャンらが収監されていたという。さらに、短い期間だったが、オレンジ共済組合事件の友部達夫元参議院議員などもいて大岩氏の記憶に残っているという。

「麻原彰晃は南舎にいましたが、家族が被害に遭った刑務官もいて、狙われてはいけないという配慮なのか、麻原だけは毎日舎房が変えられていましたね。オウムの中では新實智光とはよくしゃべったなあ。あるとき“おーい新實くん、死刑(判決)になっちゃったねえ”と声をかけたら、“そうなんですよ。ヘヘヘ”と言っていましたね。土屋正実は死刑が確定しているのにいつも朝の点呼で“土屋正実でーす。おはようございまーす”って、すごい元気がいいんだよ。彼は朝食を食べないで、好物の“しるこサンド”を食べていたな」

 大岩さんは、確定した懲役6年のうち、未決拘留で約2年が差し引かれ、東京拘置所で服役後に出所し、現在は飲食業を営んでいる。出所したころは、犯人や裁判所が腹立たしくて仕方なかったというが、現在は、「いまが一番大切なので、もう闘う気も起きません。時間は戻りませんから。だから余計な争いはしないと決めています」と、日々やるべき仕事があることの充実感に感謝しながら暮らしている。

ノンフィクションライター 青柳雄介

デイリー新潮編集部

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