第二の天安門につながりかねないから? 礼賛記事を突然削除…中国「三中全会」に見る「習近平」経済無策と「4期目も続投」の独裁強化

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国家安全保障重視で外資が逃避

 さらに、コミュニケでは習氏が経済発展よりも海外からの脅威の克服を重視していることを鮮明にしている部分がある。「対外開放という基本の国策は堅持」するとしながらも、「中国式現代化」の推進を確認し、「国家安全が中国式現代化の重要な基礎だ」と強調している。これは米中対立が続くなかで、海外のスパイ摘発などの国家安全保障を重視する姿勢を露わにしたものだ。

 習近平氏はさきごろ、治安維持部門の統括組織である国家安全委員会で演説し、「中国は強風や波浪、さらには危険な嵐にも耐え、最悪のケースや最も極端なシナリオに備えるよう万全の態勢を整えなければならない」と強調したうえで、「中国は以前よりもかなり複雑で、はるかに困難な国家安全保障問題に直面している」。しかし、そのようななかで、「中華民族の偉大なる復興を成し遂げ、中国を世界一の強国にするために、この危機を乗り越え、国家安全強国にならなければならない」と指摘。特に米国を念頭に「海外からのさまざまな攻撃に備えなければならない」と強い危機感を示している。

 中国では日本や欧米諸国の駐在員らが多数逮捕・投獄されている。今回の3中全会で習氏が「国家安全は重要だ」と述べたことで、今後も中国進出企業駐在員らが逮捕される可能性は依然として変わらず、外資の中国逃避の勢いが増す可能性が強まることは否定できない。

人口減少

 中国経済の悪化は、深刻な人口減少問題にも発展している。住居費や生活費、教育費の高騰で、結婚できない若者が増えているからだ。結婚しても、子育ての費用や教育費にお金がかかるために、子供を持たない夫婦が急増しているのだ。北京の外資企業に勤めるエリート社員でさえ「北京や上海などの大都市以外でも住居費や自動車などの家財道具などで約200万元(約4000万円)は必要だというのが常識。とても、今の給料では子供は育てられないですよ」と嘆く。

 中国政府の統計によると、出生数は今後、年間で前年比約10%ずつ減少する。国連の2024年版「世界人口推計」では、中国の人口は21年の14億2589万人をピークに減少に転じており、24年時点の14億1900万人から2100年には6億3300万人と半分以下に減少すると予測しているほどだ。

 上海社会科学院などの研究者グループにいたっては、「中国の人口は2100年までにわずか5億2500万人となり、現在の人口(14億人)の60%以上が減少する」との驚くべき研究結果を明らかにしているのだ。

 しかし、コミュニケでは、この恐るべき人口減少を食い止めるための具体的な対応策についても言及がないのである。

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