第二の天安門につながりかねないから? 礼賛記事を突然削除…中国「三中全会」に見る「習近平」経済無策と「4期目も続投」の独裁強化

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不動産不況

 では、そのような習氏が3中全会で主導した政策とはどのようなものだったのか。まず経済政策からみてみると、国家統計局が15日発表した4~6月の実質国内総生産(GDP)は前年同期比4.7%増となった。1~3月のGDPは同5.3%増だったことから、4~6月の伸び率は1~3月に比べて0.6ポイント縮まったことになる。

 このような中国経済停滞の大きな要因は、これまで中国経済を牽引してきた不動産市場の低迷にあるのは間違いない。社会主義国である中国では、土地は国有であり、土地そのものの売買はできない建前だが、その代わり、その土地の50年間分の使用権を売った代金が地方政府の大きな財源となっている。不動産業者は使用権を得た土地に住宅を建てて、それを売って利益を出してきた。

 ところが、ここ数年、住宅がだぶついて、不動産市況は停滞から抜け出せていない。今年1~6月の新築住宅の販売面積は前年同期比21.9%減で、6月末時点の在庫面積は1年前から24%増えた。中国政府が5月に発表した在庫住宅の買い取りなど追加の不動産対策は今のところ効果が乏しい。

 住宅のだぶつきは地方政府の財政不振のほか、さまざまな業種の不振につながっている。例えば、中小の金融機関の中には、不動産業者に貸し付けた資金を回収できず倒産状態のところも出ている。マンションなどおおもとの生活基盤である不動産物件が売れないので、大きいものでは自動車や家具、小さいものでは食器などの家財道具市場もだぶついており、大企業から中小まで赤字を計上しているところが増えている。

 その対策について、コミュニケでは「不動産、地方政府債務、中小金融機関など重点リスクを抑える措置をしっかりと実行する」と謳っているが、なんとその具体的な対応策については言及していないのである。

民営よりも国有企業重視

 さらに、中国経済の構造的な不況の原因は、習近平氏が2012年に最高指導者に上り詰めてから、アリババを代表とするハイテクIT企業を中心とする民営企業への規制を強化したことが大きな原因になっている。

 英エコノミスト誌は2021年8月、「過去20年間に中国が成し遂げた偉業のうち、最も印象的なものの一つとしてハイテク産業の興隆が挙げられる。アリババ集団の電子商取引(EC)サイトの取引件数は米アマゾン・ドット・コムの2倍に上る。世界で最も人気のある騰訊控股(テンセント)のスーパーアプリは、12億人に利用されている。(中略)キラキラ輝くこの産業は中国の繁栄を推進するだけでなく、米国の覇権に挑む土台になる可能性も秘めている。だからこそ、習近平国家主席が4兆ドルもの規模を誇る自国のハイテク産業を叩いていることには驚きを禁じ得ない」と報じているほどだ。

 習近平は市場経済よりも国有経済を重視しているのは間違いないところだ。コミュニケでは国有企業を中心とする公有制経済について、「少しの揺るぎもなく強化して発展させる」として、民営企業よりも国有企業を重視する姿勢を明らかにしているからだ。

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