五輪特需は無かった…パリのザンネンな宿事情 一時は民泊が“高級ホテル並み”に高騰も

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奮わぬ客足に、結局…

 しかし借りたいというオファーはあったものの、こちらが見込んでいた、オリンピック期間中だけの短期利用の申し込みは皆無だった。料金は、高騰しつつあった周辺のアパルトマンの相場に合わせて決めていた。

「まだオリンピックには日数があります。いまは客足は鈍いが、おそらく間際になれば埋まるはず」

 とエージェントは言っていたが、すでに五輪需要が思ったほどでない状況への困惑が読み取れた。パリの宿泊費の高騰、物価高によるインフレ、治安への懸念……。観光客がパリを避けているのだろうか、と思った。こうした状況に、アパルトマンの短期貸しでひと儲けしようとするフランス人がこぞって参入し、短期貸しの供給が増えすぎてしまっていたようだ。

 結局、我が家は“オリンピック特需”を諦め、長期貸しにシフトするしかなかった。

「日本人向け物件」の事情は

 五輪中にパリを訪れる「日本人向け物件」も、事情は同じだった。当初、日本人向け情報誌に掲載されていたアパルトマンの料金の高さと数の多さは、目を疑うほどだった。たとえば、パリ市内にある家族向けの民泊物件では、1泊1,000ユーロ(約17万3,000円)を超える料金が設定されていた。通常時の3~4倍だろうか。フランスの最高級ホテル「パラスホテル」並みの強気の料金設定だ。

 円安の波に翻弄される日本からの観光客は、民泊を利用して宿泊費を抑えようと考えていただろうが、この金額に天を仰ぐしかなかったのではないか。もっとも、開催が迫った今も多くの物件が掲載されたままで、値下げ傾向になっているのはホテルと同じようだ。

 流行の店が集まるマレ地区のブティックで働く友人は「7月に入って観光客の数がぐっと減った」と印象を語る。交通費の値上げ、交通規制、治安への不安など、オリンピックに興味がなければ、観光先にパリを避けたくなる要素はたしかに多い。

 オリンピック期間中にパリを訪れる観光客は1,500万人ともいわれていたが、蓋を開ければ、その9割がフランス人だそうだ。5月末の「ル・パリジャン」誌には、五輪のチケットを保有しているフランス人の45%は、宿泊施設を予約していないという調査結果が出ていた。家に帰ればいいのだろう。宿の予約が不調な理由も見えてくる。

 かすかな希望があるとすれば、オリンピック期間中の国際線の到着数が、前年の11.4%増、というニュースぐらいだ。観光面での期待は徐々にしぼんでいくなか、パリ五輪はいよいよ開催される。

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