生活保護が高齢外国人に渡ることに… 年金制度を食い散らかす外国人の「脱退一時金」とは

国内 社会

  • ブックマーク

「帰国」というくせもの

 一見、不公平にも思える「外国人にだけ認められた脱退一時金」。しかしこの制度には、もともとれっきとした「意義」があった。

「脱退一時金の制度が始まったのは95年4月。現在は10年に短縮されましたが、当時は25年間、年金保険料を納付したことが認められるなどしなければ年金の受給資格がもらえませんでした。そうすると、日本に永住せず一時的に働きに来ているだけの外国人労働者にとって日本の年金保険料はそれこそ『納め損』。つまり、本来は日本で短期間就労する外国人の不公平感をなくすための制度だったわけです」

 ところが制度が一つあれば、そこには無数の「抜け穴」が存在するのが世の常。短期政権だった当時の村山富市内閣で急ごしらえされたからか、この脱退一時金にも、ご多分に漏れず無数の“穴”が開いているのだという。

 ただ、脱退一時金ももとはといえば自身の給料から天引きされてきた保険料。払ってもいない保険料を持ち逃げするわけでなし、母国に帰れば日本の社会保障制度とは縁が切れるのだから、悪用の仕様がないとも思える。しかし小坪氏によれば、この「帰国」という条件がくせものなんだそうだ。

「脱退一時金の制度では、『帰国』は『単純出国』が想定されています。単純出国とは雇用契約の満了など日本での活動を終えて母国に帰る際に取られる出国形態で、在留資格や住民票は取り消され、国民年金や厚生年金保険の被保険者資格も喪失する。ところが、現状では単純出国に限定せず、わずか数カ月の一時的な帰国であっても脱退一時金が受け取れる状態になってしまっている。もっと言えば、永住資格のある外国人ですら、一時的に帰国する際に脱退一時金が受け取れてしまうのです」

 在留期間が限定されていない永住外国人が一時的に母国に帰るのは、日本人の帰省や海外旅行とほとんど変わるところがない。そのような外国人にまで脱退一時金を認めてしまっては「皆年金」や「賦課方式」はたちどころに有名無実化してしまう。

何度でも脱退一時金を申請できてしまう

 だったら脱退一時金の受給資格を単純出国の外国人に限ればよいのではないか。解決策は素人目にも明らかな気がするが、そこには「縦割り行政」という霞が関のあしき慣習が立ちはだかる。

「脱退一時金は年金と同じく厚労省の管轄ですが、入出国については法務省の外局である出入国在留管理庁が所管しています。つまり、厚労省には出国を予定している外国人が脱退一時金の申請をしたところで、それが『単純出国』なのか『一時的な帰国』なのかを知るすべがないのです」

 所管が異なるとの理由だけで「出国形態が問われない」という抜け穴が放置されてきたことにはあぜんとするばかりだが、驚くべきはこれだけではない。

「脱退一時金を申請すれば年金の被保険者資格は喪失し、年金番号も削除されます。従って、仮にその外国人が再び日本に入国して働き始めても、付与されるのは新しい年金番号になる。新旧の資格はひもづいているわけではありませんから、厚労省は新たな資格を取得した外国人労働者が脱退一時金を過去に申請したことがあるかどうかも分かりません。国は脱退一時金を申請した外国人が再び日本で働くなどという事態を想定していなかったのでしょうが、現状では帰国と再入国を繰り返すことで、何度でも脱退一時金を申請できてしまうのです」

次ページ:日本人の側にも思惑

前へ 1 2 3 4 次へ

[2/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。