相次ぐ不祥事に川路利良は泣いている…148年前に編纂された「警察手眼」に見る警察官のあるべき姿

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自分を戒め徳を修めよ

《警察官ハ眠ルコトナク、安坐スルコトナク、昼夜企足(きそく=足を立てていること)シテ怠ラサルヘシ》(警察官ノ心得)

 これは勤務中の怠慢を戒めるもの。休憩時間は別として、警察官は社会のあらゆる事象に注意を払い、危害の発生を防がなければいけない。何もないからと居眠りしたり、のんびり座っていたりしては緊急事案に対応できない。勤務時間中は昼夜の別なく、いつも足を立て、事件が起きたらすぐに飛び出していけるようにする。

 この項に続けて、警察官は民衆保護の大任を任されているのだから、まず自分を戒め、さらに徳を修めて、人格の修養に努めるようにと説く。人格下劣で徳もない警察官がいくら制服を着て警察権力を振りかざしても、市民は「猿が冠をかぶっている」くらいにしか思わない。

「職務質問や取締りの現場で相手とトラブルになる警察官は、最初から居丈高で上から目線で話すタイプが多い。職務質問は隠語で“ばんかけ”と言います。語源は諸説ありますが、犯罪者が多く出歩く夜に不審者を見つけた際、『おいこら!』でも『ちょっと待て』でもなく、まずは『こんばんは』と声をかけたことから“ばんかけ”と言われるようになったと言われています。丁寧な市民接遇を忘れてはいけません」(署長経験のある元警視庁警察官)

《警察官ハ人民ノ為ニハ、保傅ノ役ナリ、故ニ我ニ対シテ如何ナル無理非道ノ挙動アルモ道理ヲ以テ懇切ヲ尽シ其事ニ忍耐勉強スヘシ》(警察官ノ心得)

 国民を仮に児童とすれば、警察官の役目は保母(現在は保育士)となる。是非分別のできない児童がどんな無理難題を言っても、腹を立てずに言葉を尽くして正しい道を教えるのが保母の役目である。警察も同様で、相手がどんなに無理非道の挙動があっても、自分の職責はその子守り役だと思えば怒る理由はない。ただし、それを貫くには相当な忍耐力を要する。凶悪不逞の徒や、いうことを聞ない対象者に腹を立てず、温顔で接しておだやかに道理を説き、最後には対象者を心服させることこそ、警察官の職責を全うするものである。

「今年の6月、代々木上原駅前交番を訪れた女性に暴行を加え、首にけがをさせた警視庁の警察官(56)が、特別公務員暴行陵虐致傷容疑で逮捕されました。無断で施設に立ち入ったと、関係者と一緒に訪れていた際に、女性が無言で立ち去ろうとしたので床に押さえつけたというものです。勤務中は色々な人に接しますが、相手の言動によってカッとなる時もあります。しかし、そういう時こそ思い出したい一節です」(警視庁OB)

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