朝日新聞の美味しいビジネス インティマシー・コーディネーター問題で注目の「先生の白い嘘」に出資…紙面の主張が全く制作現場に反映されていない

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天声人語との矛盾

 朝日新聞の論調を考えるに、紙面でインティマシー・コーディネーターの重要性を何度も記事にしているのは、たとえ愛読者でなくとも簡単に想像できるだろう。例えば名物コラム、天声人語を見てみると、2022年11月7日に掲載された「ジェンダーと流行語大賞」で言及されている。

《「インティマシー・コーディネーター」という言葉が、今年の新語・流行語大賞の候補になった》

《注目された背景には、日本の映画界などで性暴力やハラスメントの告発が相次ぐ問題がある。ハリウッドを発端とした「#MeToo」運動は欧米で5年前に始まり、この役割の導入も進む。だが、日本ではまだ始まったばかりだ》

 天声人語は《ジェンダーに関する言葉が社会に根付くまでには、痛みや怒りを伴うことが多い》と指摘した上で、セクハラなど様々な類語の歴史を紹介。《本当は、こんな言葉を使わない社会になってほしい》としながらも、《報じる側として、大切な言葉のバトンをつなげていきたい》と結んだ。

 しかしながら天声人語の訴えた“精神”は、朝日が出資した映画の撮影現場で発揮されることはなかった。

朝日の“美味しい商売”

「しかも朝日は映画に出資するにあたり、映画公開の宣伝の際に自社紙面に広告を出すことがバーターとなっている、つまり、朝日としては出資分をほとんど回収することができますから、リスクは他業種の出資先に比べると格段に低いのです。製作委員会としては、『朝日新聞社が出資』というクレジットは信頼度向上につながるという側面もあるかもしれませんが、新聞社は“美味しい商売”をしているなと思うことは正直、あります」(同・関係者)

 朝日新聞に取材を申し込むと、文書で以下のような回答があった。

《当映画は製作委員会として制作し、制作については松竹が行っているため、朝日新聞社からの回答は差し控えさせていただきます。なお製作委員会は7月5日、映画の公式サイトでコメントを発表しております》

 念のため、公式サイトのコメントも一部を引用しよう。

《本作の制作にあたり、出演者側からインティマシー・コーディネーター起用の要望を受けて、製作チームで検討いたしましたが、撮影当時は日本での事例も少なく、出演者事務所や監督と話し合い、第三者を介さず直接コミュニケーションをとって撮影するという選択をいたしました》

《インティマシー・シーン撮影時は、絵コンテによる事前説明を行い、撮影カメラマンは女性が務め、男性スタッフが退出するなど、細心の注意を払い、「不安があれば女性プロデューサーや女性スタッフが本音を伺います」とお話をしていたので、配慮ができると判断しておりました。しかしながら、この度様々なご意見、ご批判をいただいたことを受け、これまでの私共の認識が誤っていた事を、ここにご報告申し上げると共に、製作陣一同、配慮が十分ではなかった事に対し、深く反省をいたしております》

 少なくとも、この文面からはチーフプロデューサーが積極的にイニシアティブを取った形跡が感じられないし、朝日新聞として事態をどう受け止めているかも説明がない。

註:平辻哲也氏の署名原稿

デイリー新潮編集部

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