「愛子さまは政治に翻弄されている」宮内庁OBが憂う理由

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堂々巡りに

 また皇室典範は、女性皇族が皇族以外の男性と結婚した場合、皇籍を離れると規定しているため、

「婚姻を機に順次皇籍を離脱することにより皇族数が減少し、皇室のご活動を維持することが困難になる事態が懸念される」

 と指摘。その上で、女性皇族の夫と子を皇籍に入れて新たな皇族とする案と、入れない案の両論を並べた。さらには女性皇族の意思を反映できる仕組みにするという素案にまで踏み込んだが、

「民主党はあまりにも未熟でした。素人政治家の集団は国民から見限られ、政権を再び自民党に明け渡す羽目になった事実は、多くの国民の記憶にも新しいはずです」(宮内庁関係者)

 そして皇位の男系継承を絶対視する保守派に支えられた安倍政権が復活。今度は長期政権となり、愛子さまの処遇は結局、「宙に浮いたまま」(同)となってしまった。

「日本が世界に誇る皇室の存続危機という一大事への認識が乏しく政局にしか関心がない“政治屋”たちによる不毛な権力争いの犠牲者こそが愛子さまなのです」(同)

 天皇皇后両陛下が2022年9月にエリザベス女王の葬儀出席のため足を運んだ前回のご訪英では、御所の玄関で見送られる愛子さまの姿に、古株の宮内庁職員らからは「本当にご立派になられて……」と一様に感嘆の声が漏れた。

 天皇陛下が皇太子だった10年3月の英国などを経由したアフリカ諸国ご訪問では、お見送りのため東宮御所(当時)の玄関前に姿をみせることはせず、同6月にスウェーデンから招待を受けて同国皇太子の結婚式ご出席のために天皇陛下が外国訪問した際も、玄関先には現れなかったことから、「天皇家の長子としては心許ない」(学習院関係者)ように周囲の目には映り、引っ込み思案で内向的な愛子さまのご性格を心配する声も少なくなかったためだ。

政治に翻弄

「愛子さまには是非、皇室に残っていただきたい」(宮内庁元幹部)

 との意見は、国民の間にも広まっているといわれる。5月1日で天皇陛下が即位5周年を迎えられたのを前に、共同通信が実施した世論調査(4月27日)では女性天皇を認めることについて90%が賛成した。理由のトップは「天皇の役割に男女は関係ない」だった。

「つまりは愛子天皇のご誕生を、多くの国民は受け入れるとの意思を示したわけです。その中には当然、女性天皇容認論者だけでなく待望論者も少なからず存在するはずなのです」(同)

 しかし、今年に入ってからも女性皇族が結婚後、皇室にとどまることを含めた皇族減少対策についての話し合いは、遅々として進んでいない。先日閉会した通常国会でも自民党旧安倍派の裏金事件で紛糾したことから、愛子さまの将来を左右する議論は足止めを食ったかたちとなった。

「政略結婚など、現代では当然あり得ませんが、時代は違えども皇女は自身の意思を二の次にして天皇家を守る『盾』となる特別な存在です。和宮と愛子さまはそれぞれ開国と女系天皇の是非という歴史の大変革を背負っており、その存在感の大きさは別格なのです」(宮内庁OB)

 秋篠宮家の長女・小室眞子さんの結婚の際、妹の佳子さまが「姉の一個人としての希望がかなう形になってほしい」と述べられ、「国民とともに歩む皇室のメンバーでありながら『公』より『私』に重きを置くのはおかしい」といった声が、SNSなどにあふれる事態が起きた。

「地域社会や家族よりも個人が重視される今の世になっても、旧態依然とした滅私を皇室に求める風潮は根強く残っているというのが現実です」(同)

 幕末を生き、政治に翻弄された悲運の皇女が和宮親子内親王であるならば、20年以上にわたり政治に翻弄され続けている現状から、現代のそれは敬宮愛子内親王だといっても、過言ではない。

朝霞保人(あさか・やすひと)
皇室ジャーナリスト。主に紙媒体でロイヤルファミリーの記事などを執筆する。

デイリー新潮編集部

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