石丸伸二氏の国政進出、広島県知事選出馬の可能性は? 安芸高田市・“反石丸”の新市長は石丸氏に苦言

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 空前の乱戦となった都知事選は、現職の3選で幕を閉じた。小池百合子知事(71)に挑んだ蓮舫元参院議員(56)は、共産党の全面支援を受けたものの惨敗。大方の予想を覆して2位と大健闘したのは、ネットの“切り抜き動画”でのし上がった「広島の論破王」だった。【前後編の後編】

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 前編「『石丸さんは“SNS選挙第一号”』『都市部の男性が支持』 石丸信者の正体とは」では、石丸信者の正体に迫った。

 石丸伸二氏(41)の著書『覚悟の論理』を読んでみたという信州大学特任教授の山口真由氏はこう指摘する。

「端的に言えば“中身が薄い”と感じました。彼が目指しているのは理想の政治家像を打ち立てることで、“自分がどう見えるか”には徹底的にこだわる一方、“何を実現したいのか”にはこだわりが感じられず、他で聞いたような主張ばかり。その上、調整型の政治を馬鹿にしています。対決型の政治はユーチューブでは受けるでしょうが、政策を実現させるためには非常に難しいと思います」

 広島県安芸高田市長時代に対立する市議と訴訟に発展したほか、石丸氏は広島市の印刷業者から選挙ポスターなどの代金未払い訴訟を起こされ、今月5日付で上告不受理となり敗訴が確定している。

「議会とも対立し、地元で行き詰まり感のあった彼は、都知事選で“実質的な勝者”に上り詰めました。ただし、こうした政治家はアテンションエコノミー(関心経済)に乗っていかなければならず、次々に新しい話題を繰り出して注目を集め続ける必要があります」

 その手法を象徴するのが、7日の会見で国政進出について問われた際に発した、

〈選択肢としては当然考えます。例えば(衆院)広島1区。岸田首相の選挙区です〉

 とのフレーズである。

 評論家の唐沢俊一氏は、

「石丸氏の手法は、自分が勝てそうな土俵に上がって言い負かしやすい相手に勝負を挑み“勝った”と称しているだけです。何しろ安芸高田市の議会では、京大を卒業してメガバンクでアナリストを務めていた人など珍しいでしょうから……」

 としながら、こう警鐘を鳴らす。

「最近の風潮として、SNSなどで“相手をたたく”“論破する”ことがコミュニケーションだと思い込んでいる人が多い。そんな中、石丸氏は対立する市議らを敵に見立て、おとしめることで脚光を浴びてきたわけですが、それは果たして政治家として正しいのでしょうか。“ユーチューバー的”ともいうべき、場を引っ掻き回して混乱を生む手法の危険性を、われわれはもっと認識すべきだと思います」

「来年の広島県知事選に立つ可能性も」

 瞬く間に拡散する動画の特性を熟知しながら、石丸氏はいわば「弱者いじめ」を行ってきたともいえよう。そしてその手法は、今度は一国の宰相へと向けられるかもしれないのだ。

「7日に口にした“広島1区”発言の真意は測りかねますが、あながち冗談だと切って捨てられない状況にあります」

 とは、全国紙デスクである。

「裏金問題への対応が尾を引き、自民党には依然、逆風が吹いています。7日の都議補選でも8選挙区で戦い、当選は2議席にとどまるなど劣勢が続いている。実は石丸氏の登場とは関係なく、最近の党内調査で、近く総選挙が行われた場合、岸田首相も小選挙区で落選する恐れがあるというデータが出ているのです」

 岸田首相が先月、国会会期中の解散を見送ったのは、こうした報告を受けたためともささやかれているのだ。市議を執拗に攻撃するなど、これまで見られた熱狂的「石丸ファン」の振る舞いからすれば、住民票を一斉に選挙区へと移すことも十分に想定される。いずれにせよ、飛ぶ鳥を落とす勢いの論破王に乗り込まれたら目も当てられまい。もっとも、

「仮に当選しても無所属の一議員では存在感を示すことは難しい。当選ではなく、ただ岸田首相を落としたいがための出馬となるのではないでしょうか。あるいは、大きな裁量を持てる首長を再び目指し、来年の広島県知事選に立つことも考えられます」(同)

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