AKB48大ヒットの立役者が明かす“『RIVER』は「数十回直した」” 秋元康とミリオン連発…劇場客を“ドン引き”させた経験も

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“ミックスが打てる曲”を意識した『大声ダイヤモンド』がSpotify2位に!

 そして、Spotify人気曲第2位は、‘08年の「大声ダイヤモンド」。キングレコードに移籍した後のシングル第1弾で、初のオリコンTOP3入りとなった軽快なアッパーチューン。

 当時のシングル売り上げ順で見ると21番目のヒットなのに、現代におけるサブスク再生回数で2位というのは大健闘だ。当の井上も、ランキング表を見るなり、まさに大声で喜んだ。

「うわぁ、『大声』が2位だなんてスゴイ!僕自身も、頑張ったからこの結果は嬉しいね!正直言って、『軽蔑していた愛情』や『制服が邪魔をする』あたりを出していた頃(ともに ‘07年発売)は、AKB48の作風にはあまりなかったマイナー調の曲をたくさん作ったんですよ。それを劇場で聴いてみたら、お客さんがドン引きしていて(苦笑)。それで秋元さんから、“ほら、みんな座ってるじゃないか!”と、ヒジテツされる日々が続き、自分では今まで避けていたアップテンポな“ミックス”(編集部注:ステージを盛り上げるためにファンがイントロや間奏で叫ぶ掛け声のこと)を取り入れよう、と思ったんです。

 その時、ちょうどキングレコードへの移籍の話があって。“あともう一歩売れてほしい”という意味を込めて、自分でサビのところに、 ♪(フェンスの中に)入っちまえ、入っちまえ~♪ という仮の歌詞をあてながら曲を作ったんです。そして、その4作後の『RIVER』(Spotify第4位)では、彼女達が秋葉原のAKB48から全国のAKB48となっていって欲しいとの願いを込めて、スケール感のあるダンスナンバーを書きました……この2作は、僕も印象深いですね」

 なお、今回の『再会 ~Hello Again~』では、「Everyday、カチューシャ」の他にもう1曲、AKB48のメンバー・矢作萌夏と、彼女がセンターを務めた‘19年のシングル「サステナブル」をデュエットしている。本作は、Spotifyでは第10位だ。

「‘16年から‘18年あたりは、ミュージカルのほうから何本もお声がけいただいていた分、J-POPの仕事からは遠ざかっていて。『サステナブル』は、AKB48のシングル表題曲では3年半ぶりでした。

 僕はいつも、彼女たちの状況を考えながら曲を書くんですね。『サステナブル』の頃は、AKB48がいろんな意味で転換期にあったので、僕としては、“グループがこの先もいいかたちで変化し続けていくように”、と願いをこめて曲を書きました」

 矢作萌夏とのデュエット版では、ミディアム調の流麗なアレンジでカバーしており、矢作の透明感ある歌声がとても心地よく、井上のプロデュース能力に驚かされる。

「いえいえ、彼女は、とにかく歌がうまいんですよ。AKB48内の歌唱力コンテストでもダントツでした。大半の子は、“歌い方が……”、“感情の込め方が……”とか、要素を分けて審査していたんですが、彼女の場合は歌い始めた途端、全てのバランスがとれていて誰からも文句が出ませんでした。それと彼女はグループ卒業後、音楽活動をするにあたって必要な機材について僕に相談してくれたり、デモを聞かせてくれたりと、音楽制作にもとても熱心だったので、今回、声をかけてみたんです。AKB48の卒業生でも、彼女のように音楽を続けている人にぜひ注目してください」

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