飲酒運転で当て逃げ、マネージャーを身代わりに…32歳「人気歌手」を韓国国民が非難しにくいワケ

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しかも「はしご酒」だった

 だが嘘は通らなかった。警察の取り調べでキムが「酒が入ったグラスを口にしたが、酒は飲んでいない」という荒唐無稽な供述をしたことがメディアによって暴露され、さらに彼が事故直前に数店をはしごし、酒を飲んでいた事実を伝えた。

 報道によると、キムは事故当日の午後4時頃からスクリーンゴルフを備えた店で知人と酒を飲み、さらに午後6時には別の飲食店で焼酎およそ5本を注文し、知人と共に飲んだ。その後、高級居酒屋に移動し、さらに酒を飲んでいた。マスコミが公開した防犯カメラの映像には、事故発生の50分前に、この居酒屋からよろめきながら出てくるキムの姿が映っていた。その後、セダンに乗っていちど家に帰り、SUVに乗り換えて別の居酒屋に向かっている途中に、タクシーと衝突したというわけだ。

 また事故直後、キムはソウル郊外のホテルに赴き、コンビニでビールを買って飲んでいる。「飲酒したのは事故後」という隠ぺい工作のためだ。だが、5月17日、キムの飲酒運転の有無を精密分析した「国立科学捜査研究院」は“飲酒したのは事故直前だと見られる”という結果を発表した。

 証拠は十分に揃い、立件も時間の問題だった。それでもキム側は5月18日と19日のコンサートを強行し、約23億ウォン(約2.6億円)の収益を上げた。この公演の直後、「僕は飲酒運転をした」「後悔し反省している」と語ったキム。しかし、23日と24日のコンサートも決行することが発表されると、世論は「なにも反省していない」とより冷ややかになった。

 さすがに警察も寛容ではいられなかったのだろう。キムと事務所社長らに令状を申請し、23日のコンサート後に拘束した。キムは裁判所に「24日にコンサートがあるので捜査を延期してほしい」と要求するなど、最後まで公演開催に踏み切ろうとしていたという。

ファンの必死の抵抗

 キムは「逆転人生」を成し遂げたスターだった。子供のころは問題児と呼ばれ、高校生の時からすでに暴力団に入って活動していたという噂もあった。2020年にTV朝鮮の「ミスタートロット」という、トロット(韓国版歌謡曲)歌手のサバイバル番組に出演すると、優れた歌唱力とパフォーマンス、他の出演者に対する礼儀正しさが視聴者に感動を与え、一躍人気者になった。出演後、キムはさまざまなCMや番組に出演し、大規模コンサートを開くまでになっている。

 韓国国民の多くは彼に厳しい見方だが、キムのファンは違った。

 マスコミの取材に「人が死んだわけでもないのに、やりすぎ」と語ったほか、強行されたコンサート会場を訪れ「メディアが若者を押しつぶす」とキムを擁護。取材陣に抗議をおこなった。

 6月初めには、キムのファンコミュニティ「アリス」が「100億ウォンを寄付するからキム・ホジュンを寛大に処分してほしい」と、虐待被害児童を支援する団体へ募金すると予告した。75億ウォンほどが集まり、寄付したと発表されたが、実際は現金として75億ウォンではなく「キムのアルバム52万8,430枚」を“75億ウォン相当”として、団体へ送ったことが、ある新聞社の取材で明らかになった。

 堕ちた歌手のCDにそれだけの価値があるはずもない。寄付された団体は「キム・ホジュンの事故以後、アルバムをくれという人がいないので丸ごと残っている。廃棄処分しなければならない」と話した。ファンコミュニティはまだキムのCDに価値があると信じていたのだ。

 7月10日にソウル中央地方裁判所で行われたキムの最初の裁判には、女性ファン数十人が傍聴に訪れた。刑事裁判の被告人になった姿を見て涙を流すファンも……。

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