今田耕司は頑なに「中山クン」と呼び続けた 吉本芸人一派からは“仮想敵”…「農耕型タレント」中山秀征の矜持

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「狩猟型」と「農耕型」

 テレビタレントには「狩猟型」と「農耕型」の二種類のタイプがいる。狩猟型タレントは、獲物を狩るような派手な動きで見せ場を作ることを得意とする。芸人であれば巧みな話術や体を張ったリアクションで爆発的な笑いを起こしたりする。その人を見るために番組をチェックする、という積極的な視聴行動の対象になる。

 一方、農耕型タレントは、コツコツと作物を育てるような地味な仕事に専念している。ほかの出演者に話を振ったり、情報を補足したりする。司会を務めるとしても、自分から無理に笑いを取りに行こうとせずに、番組がスムーズに進行することを優先する。

 1本の番組を成立させるためにはどちらのタイプも必要なのだが、狩猟型タレントの方が目立ちやすい。農耕型タレントはどんなにたくさんテレビに出ていても人々の印象には残らないし、存在を忘れられやすい。

 中山秀征は、そんな農耕型タレントの典型である。はるか昔からテレビの世界で活動をしているが、派手な動きはほとんどない。テレビに出るときには、スタッフに求められているものをそのまま提供することに専念している。

 タレントとして有能であるにもかかわらず、それをひけらかすような素振りも一切ない。あれだけのキャリアを重ねていても、共演者や視聴者から偉そうに思われたりすることがない。

 だからといって、必要以上に卑屈になりすぎることもなく、自然体で振る舞っている感じがするので、どんな番組にも馴染むことができる。

 自分語りをしない印象のある彼が、2022年に「週刊新潮」で連載を始めたときには意外な感じがした。そのコラムの内容は、彼自身がテレビの世界で学んだことや、そこで心がけていたことが具体的なエピソードと共に語られていて、実に興味深いものだった。

 その連載の内容をベースにして、著書『いばらない生き方 テレビタレントの仕事術』(新潮社)が出版された。その中でも特に印象に残ったのは、彼と同世代の芸人たちとの激しい対立である。

 楽しげなゆるい雰囲気を見せることを得意としてきた彼は、90年代に急速に台頭してきたダウンタウンを筆頭とする吉本芸人一派とその信奉者たちから仮想敵とみなされていた。

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