「リポビタンD」広告の“性差別”論争で思い出す「マルちゃん正麺」の神対応 広告が“炎上”したら企業は常に謝罪すべきか?

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いつもの人たちが

 7月上旬、大正製薬の看板商品である栄養ドリンク「リポビタンD」の広告が「炎上」したと話題になっている。問題になった現在公開中の広告は、リポDにしては珍しく、男性バージョンと女性バージョンが制作され、男性バージョンでは「時代が変わると疲れも変わりますからね。ファイト イッパーツ!」との文言が。そしてもう一方の女性バージョンには「仕事、育児、家事。3人自分が欲しくないですか? ファイト イッパーツ!」とあった。

 そう、女性バージョンがジェンダー平等を重視する人々から問題視されたのだ。女性に育児と家事を押し付けている、育児と家事は女性がやるものである、と決めつけている――これが批判の根拠である。

 この件に関する各種メディアの報道に目を通すと、「物議を醸した」という表現が目立っていた。また、東洋経済オンラインは「大正製薬「リポビタンDの広告は性差別」? たびたび起こる“ネット炎上”は本当に燃えているのか」という記事を公開。同記事の著者は「炎上」というほど燃えてはいないと書いていた。

 かくいう私も、東洋経済オンラインの論調と同じ意見だ。「怒ってる人はいるけど、そこまで目くじら立てなくてもいいのでは、と考える人の方が多い」という印象だ。そして、「あぁ、いつもの人達が怒って、そこに焚きつけられたいつもの人々が自身にとっての正論を述べているんだな」と思った。仮に、明らかなジェンダー不平等や差別が広告内にあった場合だと、「そこまで目くじら立てないでいいのでは」という人は少なく、むしろ怒りは募り、波及する一方となり、最終的に企業は削除の上謝罪をするのが常だ。

朝、時間がないんです!

 ところが今回、大正製薬はこの問題に関して特に謝罪も説明もしていないし、この広告を取り下げてもいない。つまり、同社の宣伝部・広報部・法務部・コンプラ関連部署は問題がないと判断したのだ。妥当な判断であり、これでいいのだ。そもそも、万人を納得させられる表現などできるわけがないのだから。

 ただし、同じ広告でも明らかにマズかった事例も過去にはあった。例えば、東急電鉄のマナー広告では「都会の女はみんなキレイだ。でも時々、みっともないんだ」とあり、炎上。そのうち一つのバージョンは、上段は普通に座る女性の写真で、奥に人が見える。下段は隅っこの座席で化粧をする女性がいて、隣3席は誰もいない。

 これが意図することは「車内で化粧をするのはみっともない」ということである。そして、(車内で化粧をしない)キレイな女性の近くには人が座るが、化粧をするみっともない女性の周りから人は離れる、といったメッセージも読み取ることが可能だ。これには、「なぜ女性を狙い撃ちにしたのか」「朝、時間がないんです!」などといった意見や批判が巻き起こった。

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