小林麻央さんの命を奪った「民間療法」の罪
気功から聖路加へ
それが証拠に病状は悪化の一途を辿る。そんな中、変化があったのは16年2月のことである。事情に明るい関係者は、
「北陸地方の小林家と縁の深い医師が現状を知り、“とんでもない”と。繋がりのある聖路加(国際病院)と連絡を取り合って入院させたんです」
と話す。虎の門での標準治療を拒んでから、優に1年4カ月が経過している。聖路加の関係者によると、
「気功療法というか、全く療法にならないことを続けたせいで、瀕死の状況でした。リンパ腺が瘤のように腫れあがっていたのです」
海老蔵自身も当時の会見で、
「比較的深刻であり、いま抗がん剤治療をやっている。ずっと探りながら、良かったり良くなかったりを繰り返しながら、手術をする方向です」
と打ち明けている。ただ、
「医師と夫婦側のコミュニケーションが不調で手術にまで至らなかった」(先の聖路加関係者)
ようで、バトンは再び北陸地方の医師に戻された。
足を引っ張るエセ医学
改めてそこから頼った先が、他ならぬ北島政樹国際医療福祉大名誉学長である。
「慶應の医学部長や大学病院長もやった北島さんは王貞治さんの胃がん手術で主治医を務めるなど、重鎮です。既にステージ4だった麻央さんのQOL手術が喫緊の課題である中、様々な状況に鑑みて慶應病院がその受け入れ先にふさわしいと判断し、小林家と縁の深い医師に推薦したのです」(前出・事情に明るい関係者)
北島氏に聞くと、紹介自体は否定せず、
「いやいや、時機が来たら」
という口ぶりだった。
海老蔵は過去に、
「夏(を越すの)は絶対無理だと思った」
と語っていたが、慶應でのQOL手術の結果、秋、冬を越え、そして春を迎えるに至ったのである。
その後も夫妻はうんと高額な米国での治療を希望し、本格的な調査を重ねていたという。
「がん難民」にセカンドオピニオンを提供する、東京オンコロジークリニックの大場大氏はこう評する。
「“治りたい!”と願いながらも、重要な意思決定を惑わしたり、足を引っ張るエセ医学の影響が、ひょっとしたら麻央さんの周辺にも忍び寄ってきたのではないでしょうか。利益と不利益を勘案しながら、治ることを目標としてベストを尽くす方向になぜ、麻央さんを導いてあげる事が出来なかったのでしょうか。『切らずに治す身体に優しいがん治療』『食事療法でがんが消える』『免疫力でがんを治す』『がん自然治癒力アップ』等々。藁にもすがりたい心理につけ込むエセ情報が氾濫しているわけですが、現実にそのようなうまい秘訣は存在しないのです」