小林麻央さんの命を奪った「民間療法」の罪
民間療法にすがったが……
7月21日は、35歳の若さでこの世を去った小林麻央さん(フリーアナウンサー、タレント)の誕生日。存命ならば42歳になるはずだった。市川海老蔵(当時)夫人にして2児の母でもあった彼女は2017年6月に乳がんのため他界した。
訃報を受けて、そのあまりに早すぎる死を惜しむ声が上がると共に、一つの「教訓」を伝える人たちもいた。それは「民間療法」との距離の取り方である。
がんなどの病気に直面した時、多くの人が動揺し、治療法に迷う。そんな時、夢のような治療法がささやかれることがある。もちろん何かの助けになる場合もあるのだろうが、耳を貸していいものか――。
小林さんのケースをもとにした記事をご紹介しよう(「週刊新潮」2017年7月6日号掲載特集「『小林麻央』の命を奪った忌わしき『民間療法』」をもとに再構成しました)
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2014年2月、小林麻央さんがPL東京健康管理センターで人間ドックを受けた際、左乳房に「しこり」が見つかった。「精査すべし」と判断が下り、虎の門病院へ。診察を受けたところ、腫瘍の存在が確認されたうえで、
「若い女性に多い良性の乳腺線維腺腫に見受けられたようです。全く問題がなさそうなら半年後と言うのですが、白黒はっきりしないので“3カ月後に来てください”と伝えたのです。彼女のブログには〈「授乳中のしこりですし、心配いらないですよ。半年後くらいに、念のため、また診てみましょう」と言われました〉と綴られていますが……」
と、虎の門関係者。ところが、麻央さんは多忙だったためか、受診が遅れ、再検査を受けたのはその8カ月後だった。
「その時にがんが見つかり、針生検の結果、脇のリンパ節への転移がわかった。比較的、進行が速かったけれどこの段階で治療に取りかかれば5年生存率は90%超。当然、標準治療を勧めたのですが、麻央さん側は首を縦に振らなかったと言います」(同)
日本乳癌学会元理事長で帝京大医学部附属新宿クリニックの池田正氏が、こう疑義を呈する。
「標準治療とは、がんのタイプとステージを見て、手術と放射線、抗がん剤にホルモン療法、そして分子標的治療薬を組み合わせて治療していくものです。麻央さんの場合、抗がん剤を先にやって小さくしてから手術するという方法もありました。乳房を温存できればそうするし、無理でも再建という手がある。ですから、標準治療を受けなかったのなら、その点は疑問です」
そもそも、乳がん自体は命に影響を与えるものではない。しかしながら、それが他の臓器などへ転移した時に生命へとかかわってくる。どうしても乳房を失いたくないという思いゆえのことだったのか。
いずれにせよ標準治療から遠ざかったのは事実だが、その理由は定かではない。
つまり14年10月から、16年6月9日にスポーツ報知が〈麻央夫人 進行性がん〉とスクープし、これを受けた会見で海老蔵が乳がんだと認めるまで、いや、その後も含めて、どこで何をしていたのか判然としなかったのだ。
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