なぜ「日本のアニメ」はサウジアラビアを熱狂させるのか? 「クールジャパン」を凌駕する、外務省「アニメ文化外交」の知られざる功績
現場を支援すればクールジャパンは成功する
経済産業省以外のクールジャパンの取り組みも、迷走続きである。例えば、文部科学省は「日本のアニメーターは世界を見てくるべき」として、留学が必要だと説いている。海外で日本のアニメが支持されている実態や、イメージ作りのために街並みをロケハンするのであれば意義があるかもしれない。しかし、A氏は「世界屈指のアニメ大国で優れた人材を有する日本が、技術的な面で、海外から何を学ぶのでしょうか」と首をかしげながら、このように語る。
「日本政府はアニメ産業が基幹産業だと言っていますが、なぜ、アニメスタジオやアニメーターに直接投資しないのでしょうか。本当に基幹産業と考えているなら、例えば半導体や車に匹敵する扱いでないとおかしいでしょう。日銀が企業の株を買うことの是非はともかく、トヨタの株のように日銀がアニメスタジオの株を買ってもいいのに、積極的に行わないのはなぜなのか。言っていることとやっていることとが矛盾しています」
筆者は、クールジャパンの推進自体には意義があると考える。しかし、その手法には問題が山積していると思う。通常、海外の文化支援では予算を現場に落とすが、日本はコンサルティング会社や広告代理店に予算を落とす。だから、おかしなことになるのだ。アニメ業界を支援するのであれば、アニメーターの住居支援などでも十分効果があるだろう。
日本のアニメ産業を未来に繋げていくためには、ひとえに現場の支援が欠かせない。アニメーションの業界団体である一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)の事務局長である福宮あやの氏は、こう話す。
「コンテンツを基幹産業だと言ってくれたことは素晴らしいですし、新たなクールジャパンは“人材育成”についても言及しているので、歓迎したいと思います。ただ、キラ星探しをしているだけでは土台が崩れてしまうため、土台固めの意味での人材育成が必須です。力のある現役は高齢化しているので、人材育成は今がラストチャンスであることは間違いありません」
若手の人材育成に本腰を入れて取り組めるかどうか。政府の本気度が試されているといえよう。
第1回【公式Xはフォロワー280人…巨額赤字「クールジャパン」が再始動も“現場のアニメーター”は置いてけぼりの実態】では、コンテンツの海外輸出を促進するために設立された「クールジャパン機構」が、アニメ産業に対して積極的に投資していない実態について紹介している。
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