公式Xはフォロワー280人…巨額赤字「クールジャパン」が再始動も“現場のアニメーター”は置いてけぼりの実態

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「アニメーターを支援するものではない」

 ここ数年で日本のアニメの人気が広がった要因は、どこにあるのだろう。その一つに挙げられるのが、NetflixやAmazonプライムなど大手配信サイトの普及である。日本政府は、海賊版の撲滅に関しては大手出版社とともに取り組んできた。しかし、アニメ市場の急拡大は、クールジャパンの政策とは無関係であり、世界市場でコンテンツの魅力が発見されて需要を獲得したのが要因といえよう。

 であれば、その作り手であるアニメの制作会社や、現場で働くアニメーターを支援するのが自然な流れであるべきだろう。しかし、A氏が指摘するように、政府の予算はアニメーターに対して直接的な補填がないだけでなく、そもそもアニメ業界支援にほとんど回っていないのが実情である。

「政府の関係者はアニメには根拠法がないと口にします。ですが、実は2004年に将来の知財戦略を見据えて、“コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律(コンテンツ振興法)”が成立しているのです。この法律を素直に読めば、“国はアニメ(コンテンツ)業界を奨励するべき”と、はっきり定められているんですよ。クールジャパンなどと喧伝せずとも、すでに立派な法律がある。現在も生きているのですが、コンテンツを振興すべきと主張する政界関係者に話を聞いても、存在を知らない人が多いのには驚きます」

 国会には“マンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟”もあるが、動きがコンテンツ業界の意向を反映しているとは言い難い。長らく、政府がアニメ産業の育成にほとんど取り組んでこなかったのは、ひとえに関心がないせいなのかもしれない。2013年には、当時経済産業大臣政務官だった平将明氏が国会の答弁でこう述べている。

「アニメーターの皆さんが日本のクールジャパン、特にアニメを支える極めて重要な皆さんであるという認識はありますが、しかしながら、この出資金(注:クールジャパン機構への出資金)が、直接アニメーターの皆さんの所得に補填する形で行くことは当然ありません」

 やはり、クールジャパンはアニメーターの待遇改善といった、現場レベルのコンテンツ振興策とは言い難いだろう。

第2回【なぜ「日本のアニメ」はサウジアラビアを熱狂させるのか? 「クールジャパン」を凌駕する、外務省「アニメ文化外交」の知られざる功績】では、かつて外務省が主導して行っていた文化外交が、日本アニメの世界輸出に大きく貢献していた事実を取り上げ、その実態を紹介する。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部

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