総理大臣になりたいオッサンの「根回し会食」を傍観するだけの日本はもうイヤだ おじいちゃんしかいなくても「アメリカ大統領選」がうらやましい(中川淳一郎)

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 毎度アメリカ大統領選が盛り上がり始めるとうらやましくなります。トランプ氏はバージニア州の集会で、バイデン氏が「大失態」とまで言われた討論会について「大勝利した」と宣言。そのうえで、81歳のバイデン氏を「年齢ではなく能力の問題だ」と言い放ちました。これには支持者も熱狂! ある時は「U.S.A.! U.S.A.!」の大絶叫。おそろいの赤い帽子をかぶり、壇上にはさまざまな人種のアメリカ国民が並んで多様性を重視する政策をアピールする。

 いいですね~。国民が政治にかかわっている感MAX! 翻ってわがJAPANですよ。「自民党総裁選を見越し、岸田文雄首相と麻生太郎副総裁が2週連続で会食をした」「総裁選出馬への意欲を持つ麻生派の河野太郎氏は麻生氏と会食をした」「世論調査では次の総理にふさわしいNo.1である石破茂氏は党内の推薦人20人を集めるのに苦労しそうだ」ですよ!

 なんなんですか、このスケールの小ささと裏工作とお仲間を巻き込んだ権謀ごっこは。「自分が有利になるよう、実力者と会食をする」が選挙活動になっているのです。われわれとしては、自民党の権力争いを外野から傍観し、これら権謀活動により選ばれた宰相を強制されるしかない。アメリカは候補者の一挙手一投足を見て「こっちに入れるか」とやりますが、日本は総理大臣になりたいオッサンが「根回し完了ウヒヒ」と会食をしたり高齢の実力者にペコペコ頭を下げたりして審判の日を迎える。

 さらに言うと、自民党総裁選では「次の総選挙で勝てる顔を選ぶべきだ」というものが党としての大義名分になっている。結局日本の政治は国民の意思ではなく、党と国会議員の出世欲と利権獲得が大事なのでしょうね。

 元々私が選挙に疑問を抱いたのは、小中学校の選挙的なものが基礎となっています。小学校であれば「班長」がいて、中学校であれば各クラスから選出される「評議員」、生徒会には「会長」「副会長」「書記(3人)」「会計(2人)」がいた。班長は6人のうち、一人がなんとなくの空気感で選出されます。基本的には明るいキャラの男か、勉強ができる女が選ばれるのですが、班内で合議するにあたっては、大体もう決定しているんですよね。あとはその人物をいかに説得するかにある。基本誰もやりたくない役職なんですよ。皆、こいつをホメてこいつに押し付ければいいや、としか考えていない。

 中学の生徒会については、私は1年の時「会計」に立候補させられました。当選すれば部活にも出られないし、何かと負担の多い生徒会役員になりたいヤツなんてほぼいない。そこで、誰を候補者として送り込むかをホームルームの時間に議論しますが、もう無茶苦茶。結局こんな判断基準になります。

 書記=字がキレイ

 会計=クラスで一番数学の成績が良い

 結局私は会計で選挙に通り、部活にも参加できない1年を過ごしましたが、この経験があるからこそ「選挙に通りたい」と考える人に疑問を抱くようになったのです。しかし、議員は当選することによって、得られる利益があるんですよね。生徒会役員とは違ってさ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2024年7月18日号掲載

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