梅雨の晴れ間、梅雨明けが危険な熱中症 「前夜のアルコールも危険」「シャツの裾は出すべき」

ドクター新潮 ライフ

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なぜ梅雨の晴れ間、梅雨明けが危ない?

 まず、冒頭で説明したように「時期」に注意してください。キーワードは「暑熱順化」です。熱中症事故は「急に暑くなった時」に多く発生します。それは、暑さに体が慣れていない、つまり暑熱順化していないため、発汗などでうまく体から熱を逃がすことができないせいです。したがって、梅雨の晴れ間や梅雨明けなどが要注意なのです。

 この時期の熱中症を防ぐには、急に暑くなる前に暑熱順化をして、サラサラの汗が滝のように流れるような体にしておく準備が必要です。

 具体的には、シャワーだけではなく、2日に1回程度は湯船に漬かるようにする。あるいは、例えば帰宅時に1駅分歩いてみるといったような15分程度のウォーキングやジョギングなどの軽い運動を週5回行う。暑熱順化には2週間程度かかるケースもあるので、早めの準備が大切になります。ゴルフはスポーツであり、娯楽でもありますが、この季節、「準備」という努力をしてこそ、初めて安全に楽しめるといえるでしょう。

 なお、長期休みで暑熱順化がリセットされやすいお盆明けも、熱中症に特に気を付けたい時期の一つです。

水分補給の落とし穴

 次に、水分補給も熱中症対策としては欠かせません。近年、熱中症に対する意識が高まっているため、水分補給は対策の「いろはのい」と思われるかもしれませんが、やはりここにも落とし穴が存在します。

「水中毒(みずちゅうどく)」という言葉をご存じでしょうか。医学的には「低ナトリウム血症」と言いますが、真夏のゴルフのプレー中など、大量の発汗によって体から失われた水分を補給しようとして水ばかり飲んでいると、実は体に異変が生じてしまいやすいのです。

 具体的には、大量の水を摂取することで血液中のナトリウム濃度が下がり、けいれんが起きやすくなる。実際、2002年にはアメリカのマラソンレースで、低ナトリウム血症による死亡事故が続けて起こりました。

 発汗によって体から奪われていくのは「水分」だけではありません。「塩分」も失われていきます。そこで熱中症対策としては、水ではなく、塩分と適度な糖質を補給できるスポーツドリンクがお勧めです。ラットの実験では、水と比べてスポーツドリンクなどのイオン飲料は、2.3倍の速度で血中に吸収されるとの結果が示されてもいます。

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