梅雨の晴れ間、梅雨明けが危険な熱中症 「前夜のアルコールも危険」「シャツの裾は出すべき」

ドクター新潮 ライフ

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 冷房の効いた家から一歩足を踏み出した途端、思わず呻(うめ)いてしまう。ここは炎熱地獄か……。もはや“熱帯”と化しつつある酷暑列島において、最も大切な「夏の自己防衛策」はこれをおいて他にあるまい。ゴルフ界の取り組みに学ぶ、役に立つ「最新の熱中症対策」。【久岡英彦/順天堂大学医学部総合診療科特任教授】

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 梅雨はジメジメとしたうっとうしさによって不快感が増す時期ではありますが、一方で、現代を生きる私たちにとって“恵みの季節”であるといえるのかもしれません。

 近年、温暖化がますます進み、今年も梅雨入り前から各地で真夏日を記録するなど、猛暑は年々その勢いを増しています。そうした状況下で、梅雨の期間は日差しが減り、多少は暑さが和らぎます。熱中症が社会問題化している中、こと熱中症予防に関する限り、梅雨は一息つける恵みの季節にも思えるわけです。

 しかし、そこには一つの落とし穴が存在します。熱中症に特に注意が必要な時期としては、強烈な日差しが襲いかかってくる文字通りの真夏だけでなく、「梅雨の晴れ間」あるいは「梅雨明け」などが挙げられるのです。

「1億総熱中症予備軍」

〈こう説明するのは、順天堂大学医学部総合診療科特任教授の久岡英彦(てるひこ)氏だ。循環器内科学を専門分野とし、同時にスポーツ医学の専門家としても知られる。

 医師であるとともに、自身もゴルフ愛好家である久岡氏は、一般社団法人関東ゴルフ連盟でゴルフ振興委員会医学部会の部会長を務め、ゴルフコースでの熱中症の危険性を通じて、対策の重要性を訴えている。その対策は、ゴルファーはもとより、温暖化によって「1億総熱中症予備軍」と化す中、幅広い人に応用できそうだ。

 以下は「酷暑列島」に暮らす日本人が今の季節だからこそ知っておきたい、久岡氏による「熱中症対策のススメ」である。〉

各地のゴルフ関係者に啓発活動

 昨年7月、関東のあるゴルフコースで不幸な事故が起きました。競技大会に出場していたゴルファーが、最終ホールのプレー中に倒れて救急搬送され、そのまま帰らぬ人となってしまったのです。

 17ホール目で体調不良を訴えていたものの、あと2ホールだからということでプレーを続けていたところ、最終ホールでパットを打つ直前に倒れてしまった。

 このように、異常な高温が屋外スポーツ活動に重大な影響を与えている昨今の状況に鑑み、私ども関東ゴルフ連盟はゴルフ振興委員会医学部会を設置し、今年の2月に「高温時における具体的な行動指針(ガイドライン)」を策定しました。

 以後、各地のゴルフ関係者に向けて熱中症対策の講習会を開き、啓発活動を続けています。会場には多くの方が足を運ばれ、改めて、熱中症対策に対する関心の高さ、熱中症がいかに現代の夏の脅威となっているかを実感しています。

 そこで、私たちの取り組みを紹介することで、ぜひ熱中症対策の参考にしてもらえればと考えている次第です。

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