調子の上がらない坂本勇人を思いながら、王貞治さんと話したこととは【柴田勲のコラム】

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難しい球を打とうとしている坂本

 ファームでの調整から復帰した坂本の調子が上がらない。ずっと試合に出てきた疲れがたまっているのか、体力が落ちてきたのか。周囲からさまざまな声が聞こえてくる。本人はいろいろ工夫しているようだ。足を上げない打撃フォームでスイングをしている。

 いまさらそういう問題ではなく、坂本は難しい球を打とうとしている。もっとシンプルにいくべきだとみている。

 15日の巨人対阪神戦終了後、プロ野球90周年を記念した両チームのOBによる試合が行われた。私も参加したが、当初予定に入っていなかった王(貞治)さんが参加した。久しぶりに会って打撃の話となった。

 王さんは「打っている打者は甘い球を打っている。でも、いまの選手は打てない、難しい球を振っている。いつも(ソフトバンクの)選手には言っているんだが……。振る打者は振る」と話し、こう続けた。

「(868本の)本塁打を打ったが、難しい球は何本かしかない」

「ストライクゾーンを広く使っている」

 現在は体力自慢の選手が多い。自信満々でなんでも振ろうとする。例えば初球の外角低め、フォーク……または何も考えず、慌てて手を出す。私は後者が多いと思う。

 野手が体力に自信なら、投手は以前に比べて著しく進歩している。150キロ台のストレートを前提に多彩な変化球を駆使して、誰でもフォークを投げるようになった。ことに7、8、9回に出てくる投手は球威を併せ持つ。レベルが上がっている。

 ストライクとボール球を見極める。2ストライクまでは打てる球を待つ勇気が必要だ。そして自分が打てる甘い球をしっかりと捉える。これが肝だろう。

 王さんは、「いまの打者はストライクゾーンを広く使っている。もっと狭める必要がある」、とも語っていた。

 今季の3割打者を見るとセ、パそれぞれに2人だ。投高打低の原因はこのへんに潜んでいるのかもしれない。

投手陣で一番大きいのは大勢の活躍

 巨人に戻るが、丸佳浩は好調を維持しているし、吉川尚輝も好守にわたっていいところを見せている。エリエ・ヘルナンデスは3番の座を守っている。

 投手陣で一番大きいのは大勢の活躍だ。中継ぎ陣に勇気を与えている。以前のように100%の力を出そうとして力んでいない。6、7分の力で十分いける。

 19日からはバンテリンドーム ナゴヤに乗り込んで中日3連戦、球宴を挟んで26日から後半戦がスタートする。球宴中はしっかりと休んで英気を養ってほしい。

 最後に一言。勝負は勝ったり負けたりだがカード3連敗だけは絶対にしちゃダメだ。今年は不調の選手はいても、大きなけが人が出ていない。リーグ制覇できそうな気がしてきた。首位をキープしてほしい。(成績などは18日現在)

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

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