講談社元次長「妻殺し」に懲役11年 「やっていない!」「めちゃくちゃだ!」不規則発言連発で法廷は大荒れ「彼は釈放され漫画編集者に戻るつもりだった」

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密室内で起きた「決定的な証拠なき」事件

 事件が発覚したのは2016年8月9日の深夜2時頃。朴被告が当時住んでいた文京区・千駄木の一戸建て住宅の中で妻(当時38)は遺体となって発見された。

 通報したのは朴被告だった。その日、朴被告は深夜1時過ぎに帰宅。家の中にいたのは、夫妻と乳児を含む4人の子供たちだけだった。当初、朴被告は警察の取り調べに「妻は階段から落ちた」と供述したが、やがて「首を吊って自殺した」と変遷させた。

 検死の結果、死因は窒息死と特定された。1階寝室のマットレスからは、失禁した妻の尿や血液が混じった唾液が検出され、この証拠などを元に1、2審ともに朴被告が寝室で妻を絞殺したと認定。懲役11年の判決を下した。一方、朴被告は「妻は階段の手摺りにジャケットを括って自殺した」と一貫して無罪を主張した。

 最高裁は22年11月、「審理が尽くされていない」として高裁に審理を差し戻した。差し戻し審では逆転無罪が下ることが多いが、今回に関しては「覆らないだろう」と考える向きが多かった。

 最高裁が指摘したのは、遺体検視時の前額部の傷を写した写真の不鮮明さだった。写真に血や血を拭ったような跡は写っていないことなどを根拠に、最初の控訴審判決は「もし生きている間に出来た傷だったならば血が流れた跡がついていたはずで不自然」として自殺ストーリーを排除していた。

「差し戻し審で、検察側はより鮮明な写真を再提出。救急搬送された時に治療にあたった医師や法医学者などに証言させて、最高裁から突きつけられた“課題”に答えた」(司法記者)

「奇異というほかない」。全面的に退けられた自殺ストーリー

 そして、今回の判決で改めて、弁護側の自殺ストーリーは全面的に退けられたのだった。下記は判決からの抜粋である。

〈被告人の右腕の表皮剥奪や妻の手指の爪の隙間の付着物からのDNA型検出結果からすると、妻は苦しさから必死に抵抗したものの意識を失って失禁したとみるのが自然である〉

〈階段の手すりにジャケットをくくりつけて首をつるという方法で自殺を図ったというのも、それまでの行動からすると余りにも唐突である上、自殺が可能な方法であるとしても、状況がよく分かっているはずの自宅における自殺の仕方として、奇異というほかない〉

 朴被告は“自殺した”妻と向き合った時、すぐに救急車を呼ばなかった。

 子供たちのために「階段から落ちて死んだことにしよう」と考え、暴れ回っていた時に妻が持っていた包丁を、軍手をしてから2階の包丁入れに洗ってから片付け、タオルで階段や手すりについていた血を拭い、血溜まりや妻の顔も拭ってから、息を吹き返したような声がしたので、救急に電話をしたーーと供述していた。

 この行動についても、判決はこう厳しく指摘した。

〈そのような場面に直面した者の行動として不自然かつ不合理というほかなく、被告人の供述は全面的に見ても信用性が認められない〉

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