拘束されたイオンの日本人幹部は“有罪”の可能性が… 「米」をめぐるミャンマー軍事政権の無茶苦茶
ミャンマー軍事政権は7月11日、拘束していた小売大手イオンの現地法人「イオンオレンジ」(以下、イオン)の商品本部長の笠松洋さん(53)を起訴した。判決の期日は未定だが、有罪になる可能性は高いという。ヤンゴンで働く日本人は、「同じ日本人として理不尽に感じます。いまに始まったことではないですが」と語る。
軍事政権が、笠松さんをふくむ小売店の関係者11人を拘束したのは、6月30日の夜だった。理由は、当局が指示した米の価格より50%~70%高く販売したというものだ。現地では6月4日に両替商や金販売業者35人が逮捕されてもいる。彼らはいまだ釈放されていないことから、笠松さんの今後が心配されている。
「米」価格をめぐる流れ
軍事政権は6月24日に米の販売適正価格を通告した。高騰する価格を抑えるためだ。等級によって異なるが、価格は1キロ2,200チャット(約110円)~3,800チャット(約190円)。政権が“適正”とするこの価格は卸売価格を割り込むため、これを守ると店は赤字になってしまう。そのため、一時、米は売り場から消えた。しかし2日後には、商品棚に米は戻った。価格は従来どおりの価格、つまり政権の“適正”価格より高い値札がついていた。
ミャンマーの小売店は、日本同様、チェーン店が多い。最も大きいのは地元の「シティマートグループ」だ。イオンは以前は同店に次ぐ勢いを誇っていたが、2021年のクーデター後は、国軍に近いといわれる「ワンストップグループ」が躍進し、2位から転落したという。
各小売店が米の販売を再開したのは、ワンストップグループの店舗が米の販売を再開したことで、これに続いたことが大きい。赤信号も皆で渡れば……というわけだ。しかし政権は、先述のとおり6月30日に小売店の関係者11人を拘束。そこにはワンストップグループの幹部も含まれていた。
その後も米は売られている。価格は1キロ2,225チャットほど、政権の“適正”価格を守り、各店は赤字販売を強いられている。しかし市場の小さな店では“適正”価格の値札をつけつつ、実際に買うときには倍近い実勢価格でこっそり売っているという。政権の強硬策は空振りに終わったのか。
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