「2億円超の立ち退き料を要求し決裂」 小津安二郎も愛した焼鳥「伊勢廣」が帝劇ビル建て替えに抵抗
演劇やミュージカルの聖地として知られる帝国劇場が入る「帝劇ビル」。建て替えのため休館する予定だが、そうすんなりとは話が進まない可能性が出てきた。テナントの老舗焼鳥店「伊勢廣」が立ち退きに抵抗しているのだ。
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皇居外苑を囲む日比谷濠に面して立つ帝劇ビルは、東京のド真ん中ともいえる立地を誇る。1966年に竣工した現在のビルは2代目で、11年に建てられた初代に引き続き、その中に帝国劇場を擁してきた。
「現在の2代目帝国劇場は60年代以降、劇作家の故・菊田一夫が世界で初めて舞台化した『風と共に去りぬ』や、ミュージカル『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』など数々の名作を上演してきました。今世紀に入ると旧ジャニーズのアイドルたちの舞台も上演されるようになり、新たな客層を獲得していきました」(演劇関係者)
休館が発表されたのは2022年。老朽化した建物の防災機能を強化するべく、隣接のビルと共に建て替える予定だという。帝劇ビルの関係者はこう語る。
「すでに来年2月までにはテナントに退去してもらい、そこから解体工事に着手する計画が組まれています。しかし、地下1階の飲食店街に入る伊勢廣さんのみが退去の要請に合意せず、今年4月にビルのオーナーである映画会社の東宝さんから明け渡し訴訟を提起されました」
「2億円を超える」
東京・京橋に本店を構える伊勢廣は1921年創業の老舗で、その味は映画監督の故・小津安二郎をはじめとするさまざまな文化人に愛されてきた。本店は故・安倍晋三元首相の首相動静にも登場しており、顧客には政財界の大物も多い。
「伊勢廣さんの帝劇店は70年から続いてきました。本店ほどではありませんが、こちらもなかなかの老舗です」(同)
なぜ、このたびは係争に至ってしまったのか。
「東宝さんからすれば建て替え発表の後、丁寧に伊勢廣さんと折衝してきたという思いがあるのでは。代替物件を紹介し、家賃の約37カ月分に相当する1740万円の立退料を提示していたからです。伊勢廣さんからすると、それらの条件はのめるものではなく、最終的には2億円を超える立ち退き料を要求し、話し合いは決裂してしまいました」(同)
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