中国ネット民が「トランプ氏銃撃事件」で大盛り上がりしている本当の理由 「トランプは三国志演義の曹操」「米国を崩壊させる“偉大なるピエロ”」の声

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「曹操」との共通点

 田代氏が続ける。

「中国民衆にとって“中国史におけるヒーロー”といえば、通俗歴史小説『三国志演義』に登場する魏の創始者・曹操が挙げられます。手段を選ばず、人をヒトとも思わない“悪のカリスマ”として描かれた曹操は、中国の人たちにとって〈ダークヒーロー〉や〈トリックスター〉として今も人気が高い。もちろん本当の曹操は『孫氏』を編纂注釈したり、歴史書『春秋』の編纂を実現させるなど、学のある天才肌の政治家でしたが、トランプ氏は小説版・曹操に通じる“悪の代名詞”のように受け止められている部分がある」

 支持者らによる連邦議会襲撃事件や数々の暴言などから、中国でトランプ氏は「偉大なるピエロ」のほか、「アメリカン・デモクラシーを内側から破壊するトリックスター」と認識されているという。

「曹操も結局、三国統一に失敗しますが、いまのアメリカも見方を変えれば、民主・共和・第3の候補(ロバート・ケネディ・ジュニア氏)による“3分裂”の状態にあるともいえる。そんな混沌の状況を目にして、なおさらトランプ氏を曹操になぞらえる傾向が強まっている面があるようです」(田代氏)

自壊する「帝国」

 中国側が“トランプ劇場”をなかば物見遊山の気分で楽しめるのは「トランプが大統領に返り咲いたほうがアメリカはより混乱する」と見ているためだ。

「対中強硬派で知られるトランプ氏が再び大統領になれば、米中貿易戦争が先鋭化するとの声もありますが、中国側は先手を打って対策を整えています。すでにトランプ前政権時代から、中国企業は『グローバル・サウス』と呼ばれるインドやインドネシア、トルコ、タイ、フィリピン、ブラジル、メキシコなどに貿易中継拠点を着々ともうけ、アメリカを迂回する形で、中国を起点とした巨大なサプライチェーン網を構築しつつある。つまり“トランプ・リスク”の自国への影響を最小限にとどめ、アメリカ国内へと波及させることで自壊を促す――こうして米国に“戦わずして勝つ”のが中国にとって理想のシナリオなのでしょう」(田代氏)

 トランプ氏が中国国民にとって「真の英雄」となる日が来ないことを祈りたい。

デイリー新潮編集部

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