「麻生が石破を許す」タイミング到来を警戒する岸田官邸の不徳

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過去4度の挑戦

 9月に行われる自民党総裁選に向けて、「ポスト岸田」をめぐる争いが水面下で激しくなっている。再選を目指す岸田文雄首相(総裁)も含めて本命不在の中、主流派と非主流派が火花を散らし、どの候補が総裁選を勝ち切って、来年10月までに行われる解散総選挙の顔としてふさわしいかが焦点となっている。中でもこれまで以上に注目を集めているのが、常に「首相にしたい候補ナンバー1」に名が挙げられる石破茂元幹事長の存在だ。世論調査での人気の高さとは裏腹に永田町では支持が拡がらず、過去4度の総裁選では苦杯をなめた。ひと足先に派閥を解消してグループレベルの活動をしてきた石破氏にとって千載一遇のチャンスと言われる今回、有力候補に躍り出るためにカギを握るのが麻生太郎自民党副総裁の存在だという。

 石破氏はこれまで2008、2012、2018、2020年と4回の総裁選に立候補した。12年は1回目の投票である地方票で首位に立ったが、国会議員のみの決選投票で安倍晋三元首相に敗れている。

安倍、麻生氏との確執

「石破氏と安倍氏、そして安倍氏の盟友・麻生氏との間の遺恨はその前から始まっていると見られています。第1次安倍政権下の2007年、参院選で自民党が大敗した際、安倍氏に対して退陣を促すような発言をしました。2009年の麻生内閣末期には『麻生おろし』の急先鋒を担ったと指摘されたこともあります」

 09年当時、農相を務めていた石破氏は、麻生氏の解散方針を翻意させるべく官邸まで乗り込んだとされる。その後に麻生氏が衆院解散に踏み切って自民党が下野したことを振り返って石破氏は、「自民党というだけでばった、ばったと落ちた恐ろしい選挙だった」と後に語っている。

「今国会でも、政治資金規正法改正をめぐって、麻生氏が岸田首相の方針に異を唱え、“将来に禍根を残すような改革だけはやっちゃいかん”と述べたことに対して石破氏は、“副総裁というのは総理を支える、ナンバー2と言ってもいい(存在)。そういう方がこういうことを言われるからには、党内で何でこういうことを言われたのかということをご説明いただいた方がいい”などと発言していました」(同)

 現時点でも麻生、石破両氏の溝が深いことは誰の目にも明らかだろう。

元々は弱小派閥の一員

 安倍氏が政権を奪還した2012年以降、麻生氏は副総理兼財務相として政権を支え、主流派として振舞い続けた。

「元々は弱小派閥の一員だった麻生氏は徐々に力をつけ、少し前までは党内第2派閥を構成するまでに勢力を拡大しました。その後に派閥は解消されたとはいえ、麻生派は活動を継続しています。麻生氏は今年84歳を迎えることもあって、政治生活の最終盤を迎えているタイミングで非主流派に転落するわけにはいかないという思いはかなり強いとされていますね」(同)

 政権の支持率が安定している間は、岸田首相を支持すれば良かったのだが、支持率が低迷し始めるとそうもいかなくなった。首相に代わる「勝てる候補」を模索する日々が始まった。

「共に主流派を形成してきた茂木敏充幹事長は首相への意欲を隠さないのですが、世間的にも党内的にも支持が拡大せず、麻生氏としてもなかなか乗りづらい。ならば次善の候補を推したいところなのですが、いないわけではないものの好適な人物がいないのが本音でしょう」

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