貝類、化粧品、飲食チェーンの包装紙…水道水以外にもこんなにあった! 発がん性物質「PFAS」の意外な潜伏先

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水道水以外の危険性

 丈夫で便利な「永遠の化学物質」としてさまざまな製品に使われてきたというが、水道水以外でPFASが含まれる危険性の高いものとは何なのか。

 まず直接、口から体内へ取り込んでしまうものとして危険性を指摘されたのが「貝類」である。

 科学ジャーナリストの植田武智氏が言う。

「私は食の安全・監視市民委員会という組織に属しており、2023年に、市販の中国産と国産のアサリのPFAS濃度を、京都大学に依頼して調査しました。その結果、中国産は国産に比べて10倍以上、高濃度のPFOAが検出されたのです。 これはEFSA(欧州食品安全機関)の基準に照らすと、アサリ汁1杯で1日摂取許容量の1週間分を超えるほどの量になります」

 国内で消費されるアサリの9割近くが輸入品で、うち約7割が中国産とされている。国産品は高価なため、巷の飲食店では、貝汁には安価な中国産アサリを使う店も多いのが実情だ。

 なぜ中国産アサリから高濃度のPFASが検出されるのか。一つには、アサリが陸地に近い水深の浅い海で採れるため、海に流れ込む河川や沿岸などに汚染源があれば影響を受けやすいからだという。

 再び植田氏に聞くと、

「山東省や河北省沿岸部の有機フッ素工場からの排水が原因と思われます。米国の研究でも、中国産アサリから高濃度のPFOAが検出されていますし、中国の研究では、渤海沿岸で採れた貝類でPFOAが検出され、アサリ、ムール貝、ホタテ、ツブ貝、カキの順に濃度が高かったそうです。中国産に限らずですが、高濃度に汚染された海域で採れた貝類を食べるのは、念のため控えた方がいいでしょう」

河川の調査から……

 貝類の汚染が深刻なら他の魚などは大丈夫なのか。

 PFAS研究の第一人者で、植田氏に依頼されて前出の市販アサリの調査を行った京都大学大学院医学研究科(環境衛生学)の原田浩二准教授が解説する。

「魚への影響も懸念されますが、海は非常に広いのでPFASが拡散しても海流などで希釈され、さほど蓄積しないのではないかと推察します。むしろ汚染された河川や湖に生息する生物を口にする方が、体への影響は大きくなる傾向にあると考えられます。実際、われわれが行った河川の調査では、ドンコやカワムツといった魚やザリガニなどから高濃度のPFASが検出されましたが、魚介類を一切食べるなというのは現実的に無理があると思います。現状では、PFASで高レベルに汚染された地域の魚介類はなるべく避ける必要があります」

 しかしながら、日本では周辺海域を対象にした大規模なPFASの汚染調査は実施されていない。消費者が注意しようにもできない現状があり、一刻も早い実態解明が待たれるのだ。

 有料版では、化粧品や日用品などに潜むPFASの一覧表や、大手ファストフード・コンビニチェーン各社に「PFAS包装紙」の使用実態について尋ねた回答結果など、「身の回りのPFAS」についての検証結果を詳報している。

デイリー新潮編集部

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