電気の力で「うま味」「塩味」が増す!? 減塩をサポートしてくれる「最新スプーン」を調べてみた

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 血圧が気になる人に朗報か。食べ物の塩味やうま味を“電気の力”で増強する、その名も「エレキソルトスプーン」の販売を始めたのはキリンホールディングス。1本1万9800円とお安くはないが、公式オンラインストアでは購入希望者が殺到する人気ぶりだ。

減塩食品の“塩味”が約1.5倍に

 一体、どんな商品なのか。

「減塩は重要と分かっても、つらくて続けられない」

 同社ヘルスサイエンス事業部・新規事業グループ主務の佐藤愛さんは2018年、慢性腎臓病の患者からこんな声を聞いた。かねて手がけていた新たな食品素材の開発や調理法での解決を模索する中、バーチャルリアリティーにおける味覚・嗅覚の技術にたどり着き、その分野で先行する明治大学と共同研究を開始した。

「塩味やうま味の増強を実現する電流量や波形の組み方、食事動作に合わせて電流を流すタイミング、持つ際に違和感のない外装など多くの調整を繰り返した」

 とは佐藤さん。

「共同研究で減塩食品の塩味を約1.5倍に増強する電流波形を開発し、22年からプロトタイプの製品を使った実証実験を開始。ユーザーの声をもとに改良を進め、今年5月のオンライン発売に結び付けました」

 全長は約25センチと少し大きめ。小型電池(CR2)を入れて使う。柄の部分とスプーン表面、それぞれの電極に手や食ベ物が触れることで電流が生じ、塩味やうま味を強く感じさせる仕組みだ。

 研究段階では箸タイプのものも試作したが、箸は電源とつなぐ必要があって食事中の動作を邪魔しがちで、人によって持ち方にバラつきもあるため断念した。

いざ実食してみると…

「ちょうどいいと感じる味から料理の調味料を30%程度減らし、エレキソルトスプーンを使われるといいのでは」

 一定の水分を含んだ食品がスプーンに触れ、電流が流れる間だけ“味”が増強される。だからそしゃくに時間がかかる食べ物には不向きだ。また、甘味は電流でコントロールできず“増強”できない。

 日本は世界との比較でも塩分摂取量が多い。キリンが減塩食の実践者に行った「薄味ではなく濃い味で食べたいもの」のアンケートではラーメンが断トツ。日本人は、なべて塩分過多と隣り合わせなのである。

 さて、強度を4段階の最強にして無塩カレーを食すと、普通のスプーンに比べて確かにうま味が濃い印象。

 少しだけ塩を入れると、今度は塩味が十分に感じられた。塩分を減らしながらもしっかりした味の食事を楽しみたいというムキには、手放せなくなりそうだ。

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