夏ドラマ12本「視聴率調査」 注目の「ブラックペアン2」「海のはじまり」 伸び悩む「櫻井翔」の意欲作

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視聴率が伸びない「笑うマトリョーシカ」

「新宿野戦病院」の主演は小池栄子(43)と仲野太賀(31)。舞台は東京・新宿歌舞伎町のボロ病院である。

 小池は日本の医師免許がない ものの、志は高い医師のヨウコに扮している。仲野は免許こそあるものの、金儲けと女性のことしか考えていないダメ医師・高峰享役だ。

 この作品には暴力団排除の流れによって落ちぶれた老ヤクザや不法滞在の外国人、体を張ってホストに貢ぐ若い女性などが登場する。一定の人生経験がないと共感するのは難しいはず。このためか、若い世代の数字は高くない。

 もっとも、脚本を書いているクドカンこと宮藤官九郎氏(53 )もそんなことは百も承知のはず。だから若い世代が嫌いそうな「性病」などの言葉もセリフでバンバン使う。

 クドカンは敬愛する作家・山本周五郎の名作『赤ひげ診療譚』を現代の新宿でやろうとしているのではないか。この小説の主人公・新出は、立場の弱い長屋暮らしの人たちの救済に心血を注いだ。新宿の弱者を相手にするヨウコの姿と重なる。

10:TBS「笑うマトリョーシカ」(金曜午後10時、12日放送の第3回)個人2.8%/コアは1.5%で9位/F1層1.8%/T層1.3%

11:日本テレビ系「降り積もれ孤独な死よ」(日曜午後10時半、14日放送の第2回)個人2.7%/コアは1.9%で5位/F1層2.1%/T層1.6%

12:フジテレビ「ビリオン×スクール」(金曜午後9時、12日放送の第2回)個人2.1%/コアは1.3%で11位/F1層0.9%/T層0.8%

「笑うマトリョーシカ」は主人公の新聞記者・道上香苗(水川あさみ)が、有力な若手政治家・清家一郎(櫻井翔)を操っている人物を探す物語。原作は早見和真氏の人気小説で、ドラマもよく出来ている。しかし、視聴率が振るわない。

「日本では政治ドラマが嫌われがち」と言われるが、この作品もそうなのか、それともやや難解な部分があるので敬遠されているのか。伏線などを見逃さない考察ドラマではなく、推理と人間ドラマを楽しむ作品だ。

「降り積もれ孤独な死よ」も考察ドラマというより推理作品。主人公の刑事・冴木仁(成田凌)が、子供たち13人が殺された事件の真相を追う。児童虐待問題にも踏み込む意欲作である。この作品も内容はいい。

高堀冬彦(たかほりふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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