「小池栄子の英語」はなぜ下手くそで良いのか 日本人の「外国語コンプレックス」を逆手に取った秀逸な視聴者いじり

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東京の現実を隠さず表現

 前出の放送ライターは「歌舞伎町で起きていることは、貧しくなってしまった日本のリアルな一面を如実に示しています。外国人観光客に日本の好きな場所や食べ物を聞いて回る日本礼賛型の番組企画が氾濫している中、クドカンは“サムライ”“富士山”“浅草寺”などといった固定化され美化された日本のイメージではなく、東京の現実を隠さず表現することの必要性を考えたのではないでしょうか」と前置きしたうえでこう続ける。

「橋本演じるNPO法人スタッフが、歌舞伎町を生配信しているのもそのような文脈に沿う演出です。第1話では歌舞伎町に押し寄せる外国人の集団が映し出されますが、これは日本経済を苦しめている超円安を、パパ活に熱心な少女たちは若年層の貧困化を示唆しています。ニュースならまだしも、プライムタイムのドラマで生々しく取り扱う題材ではないのでしょうが、そこに人間ドラマを見出し壮大なエンターテインメントに仕上げているところがクドカンらしいですね」

 このドラマのもう1つの特徴として、登場人物に二面性を持たせているところがある。南舞(橋本)はNPO法人Not Alone新宿エリア代表と、3年先まで予約で埋まっているSMの女王。看護師長の堀井(塚地)は男性なのか女性なのかはっきりしない。聖まごころ病院の院長・高峰啓介(柄本明)はアルコール中毒で使い物にならないように見えるが、実はけっこう凄腕な外科医。金儲け主義の美容皮膚科医・高峰享(仲野太賀)は広尾の美容クリニックで働く一方、夜は麻酔の勉強のため聖まごころ病院で働くという二重生活を送っているが、南舞やヨウコの出現で心が揺れていく。このような濃い登場人物に囲まれる中、ヨウコはまったくブレる気配がない。

 フジテレビ関係者がこう話す。

「歌舞伎町ではホストクラブをめぐるトラブルが頻発していますが、第2話ではホストにほれ込む女性の心理や、小池さん演じるヨウコがひょんなことからホストクラブに入店しシャンパンタワーに大喜びするシーンが登場しました。歌舞伎町を一方的に“不適切”な場所だと決めつけることはせず、その存在理由も合わせて描いているところにクドカンらしい優しい視線を感じます」

 NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(2013年)や今年1月期のTBS系「不適切にもほどがある!」では、震災と被災者を包み込むような温かいストーリーを作り出したクドカン。ただ、「新宿野戦病院」の視聴率を見ると第1話が世帯7.9%、個人4.5%。7月10日放送の第2話は世帯7.1%、個人3.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)とダウンしてしまった。

「『不適切にもほどがある!』は過去と未来をタイムスリップし、東京や神戸などロケーションもバラエティーに富んでいました。それに比べ『新宿野戦病院』の舞台は歌舞伎町という狭いエリア内なので、これが続くと飽きられる懸念もありますが、予想外のキャストが登場すれば視聴率を盛り返す可能性があります。クドカンに橋本愛という組み合わせなので、『あまちゃん』に出演したのんのサプライズ出演を期待したいところです」(同)

「不適切にもほどがある!」では歌手の小泉今日子が本人役で出演し視聴者を驚かせた。「あまちゃん」ではヒロインのアキ(当時能年玲奈、現のん)の母・春子を小泉が演じ、橋本はアキの高校の同級生でローカルアイドル「潮騒のメモリーズ」を一緒に結成するユイを演じた。今後、のんのサプライズ出演があれば歌舞伎町だけではなく列島を歓喜させる朗報になりそうだ。

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