「小池栄子の英語」はなぜ下手くそで良いのか 日本人の「外国語コンプレックス」を逆手に取った秀逸な視聴者いじり

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フジテレビ「新宿野戦病院」

 TBS系「不適切にもほどがある!」などで知られるクドカンこと宮藤官九郎が、脚本を担当したフジテレビ系連続ドラマ「新宿野戦病院」(水曜午後10時)。東京・新宿区歌舞伎町の路地にあるボロい「聖まごころ病院」を舞台に、小池栄子が米国籍の元軍医に扮した救急医療エンターテインメントだ。小池をめぐっては英語の台詞に関して違和感を抱く視聴者が多いようだが、「雑だから面白い」という“小池擁護論”が増えている。

 小池が演じているのは米国で生まれ育った元軍医のヨウコ・ニシ・フリーマン。13年間軍隊病院で働き戦地の野戦病院で兵士や住民の救命活動を行った。「どんな命も平等」がモットーで果敢に外科手術をこなすが、腕前はけっこう“雑”。

 連続ドラマに詳しい放送ライターがこう解説する。

「このドラマでは、クドカンも小池もネイティブな英語を話そうという気持ちはまったくないです。むしろ英語を“雑”にすることで、ヨウコの物怖じしない自由奔放な性格を表現しているようです。なにせ名字も『フリーマン』ですから。劇中では塚地武雅演じる看護師長の堀井しのぶも英語を話します。いずれもネイティブの発音ではありませんが、堂々とした態度です。英語となるととかく腰がひけてしまう日本人に対し『下手でも通じればいいんだよ』と背中を押すメッセージのようにも思いますね」

 ただ、橋本愛が扮するNPO法人Not Alone新宿エリア代表の南舞はネイティブ並みの英語の発音で歌舞伎町の動画を世界に向けて発信している。初回冒頭、テロップで流れたその紹介文が皮肉に満ちている。

≪ここは新宿歌舞伎町 東洋一の歓楽街です。近年、健全かつ衛生的な若者の街として生まれ変わり、ホストクラブ、ガールズバー、その他、合法的な店が軒を連ね誰でも安心して遊べます。歌舞伎町にはあらゆる人種が集い……≫

 ホストの売り掛け問題、悪質なぼったくり、病院脇の路地に佇む少女たち。社会問題山積の歌舞伎町が≪健全≫で≪誰でも安心して遊べる≫とはとても言い難い。しかし、クドカンの狙いはそこにあるというのだ。

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