なぜか詐欺事件を名目に、ある日突然、公安部の刑事がやって来た…同業他社の社長が語る「大川原化工機冤罪事件」

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今まで普通に使ってきた製品が

 パウダリングジャパンは、30年ほど前、、森永乳業に勤めていた高橋社長の父・正嗣さんが独立して興した噴霧乾燥機専門の会社だ。正嗣さんが72歳で亡くなった後、会社を継いだ高橋社長とて、大川原化工機を批判しているわけではない。

 高橋社長は「そもそも生物兵器製造になど使えるはずもない」噴霧乾燥機がターゲットになったことの理不尽さや事件経過への強い違和感を話したに過ぎない。裁判上は「噴霧乾燥機でできるはずない」では通らず、具体的な反証をするしかなかったのだだろう。

「今まで普通に使ってきた製品が急に違反とされて逮捕までされた。みんな不安ですよ」

「捜査機関に変に目を付けられたくない」と同業者が口をつぐむ中、高橋社長は虚心坦懐に話してくれた。噴霧乾燥機は乳酸菌を生きたままで粉末にできる。そうした機能から「生物兵器への転用の恐れ」云々の対象になったが、そもそも規制対象にすべき製品だったのか、原点に立ち返る時かもしれない。

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に『サハリンに残されて』(三一書房)、『警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件』(ワック)、『検察に、殺される』(ベスト新書)、『ルポ 原発難民』(潮出版社)、『アスベスト禍』(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

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