なぜか詐欺事件を名目に、ある日突然、公安部の刑事がやって来た…同業他社の社長が語る「大川原化工機冤罪事件」

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そもそも殺菌するための装置ではない

 大川原化工機事件の嚆矢は、公安部が「噴霧乾燥機は熱風を吹き込むことで細菌が死滅する温度になる」として立件しようとしたことだった。刑事裁判対策の近道として、大川原化工機側はこれを実証で潰すため必死に実験を重ねた。東京地検の検事がこの「対抗実験」に立ち会っていたことも、異例の「起訴取り消し」につながった。

 この件について高橋社長は「警察はもちろん大川原さん側の実験も、私にはちゃんちゃらおかしく見える」と言う。スプレードライヤはそもそも殺菌するための装置ではないからだ。

「『200度で殺菌できますか?』と訊かれても『できない』と言うしかない。公安部が来た時にもそう答えました。(原材料は)水分を含みますから、装置から出す時の温度が90度なら、それよりマイナス10度ぐらいにしかならない。殺菌するならCIP(液体の洗浄剤を容器内部に噴射・拡散する装置)がありますが、パッキングの隙間などに入った菌は残る可能性がある。プレートヒーター等を使用して120度に上げたとしても、耐熱生菌や芽胞(がほう)菌は死滅させることはできません」

 大川原化工機側の検証もおかしいと指摘する。

「『菌を死滅させる温度に達しない』のは、あくまで一般的な条件で実験した時だけ。やろうと思えば死滅する温度にできます。ただ、そもそも温度が達するかどうかなんて全く関係がなく、スプレードライヤで自動的に殺菌できるという考え方自体がおかしい。警視庁も大川原さんも、私には言っていることがよくわからないんですよね。

 大川原さんは一生懸命データを取って『こんな温度になりませんでした』と言っている。でも、私に装置を貸してくれたら、死滅する温度に到達するように運転できます。ものすごくプラス圧にして出口を絞ってしまえば、温度はどんどん上がる。『温度が上がり切らないから(死滅しないので)無罪』というのもわけがわからない。わかってない人同士が争っている印象です。そもそものスタートがおかしいと思います」

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