【フランス総選挙】極右が勝利したほうがマシだった? 左派連合の“逆転勝利”で待ち受ける混乱

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むしろ極右のほうがましだった?

 そうなると、むしろ極右のRNが勝利したほうがましだった、という気持ちも心をよぎる。なぜなら、その場合は29歳のバルデラ党首が首相になり、2027年の大統領選挙でマリーヌ・ルペンを勝利させるために経済を大混乱させるようなことは避けただろうからだ。

 RNは、もうEUや共通通貨ユーロからの離脱は言わないし、NATOとの関係の変更についても慎重だ。ウクライナ紛争でも、マクロン大統領よりはだいぶ後ろ向きだが、ロシアの肩を持っているわけでない。そもそもウクライナのNATOやEUへの加盟にはマクロン大統領だって実質的には反対だったのである。トランプ大統領が復権したら、むしろ、極右政権のほうがトランプと上手にやっていけるかもしれなかった。

 2022年大統領選挙時のマリーヌ・ルペンの公約は1000億円の財源が必要だといわれていたが、今回は年金受給年齢について「基本目標は維持するが急がない」と言った。エネルギーに対する付加価値税の引き下げなどを掲げている程度である。

 財源については、官僚主義の是正、税の抜け穴への対処、移民の社会福祉制限で賄えるとしている。ウクライナ支援は減らすだろうから、かなりの節約になるし、ロシアとの関係改善はエネルギー価格を下げる。

なぜRNは異端扱いされるのか

 RNがどうして極右と呼ばれ、体制外の異端扱いされるかといえば、つまるところ、第二次世界大戦でレジスタンス勢力こそが現フランス共和国を創ったという歴史的事情による。このため、マリーヌ・ルペンの父親で創始者のジャン・マリー・ルペンがナチスを肯定するような発言をしていたことを理由に、RNを排除するのみならず、RNを切り崩すために穏健派を招き入れるとか、RNの政策を一部採り入れるといったことも拒否しているのである。

 このことは、かえってRNの組織を切り崩されない強固なものにしてしまっているように見える。RNが30%を超えるフランス国民の支持を受けているとなれば、RN全体を連立相手などとはしないだけで良く、分裂を誘って受け入れるほうが賢明ではないかという気がしないわけでもない。

八幡和郎(やわた・かずお)
評論家。1951年滋賀県生まれ。東大法学部卒。通産省に入り、大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任。徳島文理大学教授。著書に『365日でわかる世界史』『日本人ための英仏独三国志』『世界史が面白くなる首都誕生の謎』など。

デイリー新潮編集部

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