【フランス総選挙】極右が勝利したほうがマシだった? 左派連合の“逆転勝利”で待ち受ける混乱

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経済政策に意見反映

 左派連合は、71議席の不服従のフランス、64議席の社会党、33議席の環境派、9議席の共産党、3議席のその他からなっている。不服従のフランスは「フランスのバーニー・サンダース」(米国民主党左派の政治家)と呼ばれるジャン=リュック・メランションが率いる、反EUや反イスラエルなどの主張が際だった勢力である。

 左翼連合はさすがに、EUやNATOからの離脱をマニフェストに入れなかった。だが、経済政策では、この不服従のフランスの意見を大幅に採用したマニフェストを発表しており、

1.2023年の年金改革法を撤廃して64歳からになった年金支給を60歳に戻すこと
2.公務員給与と福祉給付の増額
3.最低賃金の14%引き上げ
4.基本食品やエネルギーの価格凍結

 をうたった。民間の試算によれば、これらのコストは1500億ユーロを超えると予想されている。富裕税の復活や大企業への課税強化に財源を求めるというが、到底不可能と見られている。

 またLGBT関係では、性別の変更を裁判所の関与なしに市役所で可能にするとか、移民・難民に寛容な方策の採用なども約束している。

連立政権は極右と極左を利するだけか

 そこで大統領は、過半数がとれなかったという理由で社会党などに左派連合の公約の多くを放棄させて、大統領派や右派との連立政権を組織しようと画策している。

 その場合には、首相に社会党のル・フォール党首、オーブリ元労働相(ドロール元EU委員長の娘)、ラファエル・グリュックスマン、オランド前大統領、緑の党のトンデリエ党首、大統領派のダルマナン内相やアタル現首相、共和党のベルトラン、あるいは、ビルロワドガロー中央銀行総裁など実務家の名が上がっている。

 たしかに、上記の三勢力の議席を合計すると296議席となって過半数は確保できる。だが、社会党内の左派が造反する可能性もある。また、発足してもこれまでのマクロン路線と対して変わらないものになるだろうから、国民の不満はたまり、極右と極左を利するだけだろう。

 もちろん、不服従のフランスのメランションか他の人物に任せて大混乱を引き起こさせてから、社会党に離脱させるとか奇手はあるが、その場合に経済にもたらす打撃は耐えがたいものになるだろう。

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