【フランス総選挙】極右が勝利したほうがマシだった? 左派連合の“逆転勝利”で待ち受ける混乱
フランス総選挙では、マリーヌ・ルペンが実質的な指導者である極右のRN(国民連合)の勝利が予想されていた。だが同党は3位に留まり、左派連合のNFP(新人民戦線)が首位、中道のマクロン大統領派のENS(アンサンブル)が2位、旧ドゴール派の共和党(LR)中心の右派が4位となった。どのグループも過半数に遠く及ばず、首相の交代はパリ五輪後の8月以降になりそうだ。
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意外にも極右は143議席
フランス議会総選挙は2回投票制になっていて、上位2候補による決選投票ではなく、12.5%の得票があれば2回目に残ることができる。
そこで当初は、6月30日の第1回投票で優位に立った極右が、7月7日の第2回投票では過半数289議席に対して250議席(左派が190議席、大統領派が75議席、共和党が40議席)を獲得すると予想された。ことによっては、極右が過半数を獲得することもあり得るとされた。
これに慌てた大統領派と左派が共闘を決め、候補者調整を大胆に進めたので、投票日直前には、極右は第一党にはなるが190議席程度に留まると予想された。
ところが投票が終わると、意外にも極右は143議席しかとれず、左派が180議席で首位、大統領派が158議席で2位、右派は67議席となったのだ。
今度は「不服従のフランス」の排除を呼びかけ
フランス憲法では、総選挙の結果にかかわらず、大統領は自由に首相を任命できる。一方で、議会は少し厳しい条件がつけられているが、内閣を不信任できるという制度だ。
慣例としては、最大会派から首相を任命することになっている。だが、マクロン大統領は極右が勝利しても、過半数をとらない限りは自分に近い政治家を首相に任命し、左派もそれを受け入れる可能性が強いと見られていた。
ところが大統領の介入が効き過ぎて、極右は第三党にとどまり、左派が第一党になってしまった。普通は左派から首相を任命することになる。
ただ、左派も過半数にはほど遠く、法案は通せない。だから政令などで左派的な措置の実現を強引に図ることが予想された。大統領の議会解散は総選挙から一年間は認められないので、議会でのとんでもない混乱が予想されていた。
そこで大統領は国民に団結を呼びかけ、極右だけでなく、左派連合のなかでも極左集団といわれる最大会派の「不服従のフランス」を排除するように促した。
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