中学受験でトップ合格したが不登校に…立ち直りのきっかけは「ポケモンカード」 父親も「やるなら血反吐吐くまでやれ」
不登校児童生徒が約30万人の今、子どもが学校に行かない、昼夜逆転して家でゲームばかりしているなど、悩みを抱える親も少なくないだろう。だが、無理に学校に行かせようとしたり、勉強させようとしたりするより、子どもの好きなことを徹底的にやらせることが、実は立ち直るための近道になることもある。好きなことに全力で取り組むことで成長し、進路も見えてくる。2人の実例を紹介する。【小山美香/教育ライター】
【写真】「指紋が擦り切れるまでやれ」と父…道を決定づけた「特別なカード」とは
私立中学にトップ合格したものの
都内に住む高橋意織(いおり)君(18)は、中1の秋から学校に行かなくなった。中学受験して第一志望の私立中学にトップ合格して進学したものの、宿題を全くせず、成績が急降下した。友達もできず、楽しくなくて、「お腹が痛い」と休むのを繰り返し、そのうち全く行かなくなった。
意織君は「まわりが学校に行っているのに自分だけ行けない罪悪感があった」と、お父さんは「行くのが当然と思っていたので、最初は行かせようと必死でした」と話す。「行きなさい」「行けない」と揉めて、親子ともに疲弊する毎日だったという。
転機になったのは、不登校やひきこもりの支援をしているNPO法人「高卒支援会」にお父さんが相談したことだ。中1の1月からフリースクールとして同会の 教室に通うようになった。相変わらず勉強はしなかったが、毎日登校して、好きなゲームと読書に明け暮れた。
その後、高卒支援会がサポート校となって提携している通信制高校に進学したものの、やはり勉強をしない状態は続いた。
ポケカへの没頭が成長につながる
あるとき、友達に誘われてポケモンカード(以下ポケカ)を買いに行った。初めて買った5枚入り180円のパックをあけると、「ディアルガ」というキャラクターの特別カードが入っていたという。マニアの間では5000円で取り引きされているものだった。
「運命を感じました」という意織君、そこからポケモンカードゲームに夢中になった。高卒支援会の教室で友達や先生と対戦をして、放課後は新宿のカード店で常連客と対戦した。大会(チャンピオンズリーグ)に出場するために、ファミレスでバイトをしてお金を貯め、京都や仙台など各地で行われる大会に夜行バスで行って出場した。
意織君の成長を見守ってきた高卒支援会の理事長・竹村聡志さんが話す。
「初めて会った日、一緒に帰ろうと言っているのに、意織君はイヤホンを外さないのです。そのくらい人とコミュニケーションをとることが苦手でした。しかし、ポケカを始めてから変わりました。気がついたらカード店で大人に混じって上手にコミュニケーションをとり、しかも一緒にご飯を食べるほど仲良くなっていました。夏休みにはカナダへ短期留学に行きましたが、現地の高校生に英語で話しかけて、対戦していました。行動力もコミュニケーション力もついて、大きな成長です」
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