「麻薬取締官」を騙った“チンピラ密売人”に惚れて…美貌の女子大生はなぜ“シャブ地獄”へと堕ちたのか
「何をやっても“にせもの”です」
Aの治療が落ち着いた段階で、私はAと女を覚醒剤所持事実で逮捕した。Aはこれまでの経緯についてこう語った。
「若かったせいもあって、駅で彼女を見て一目ぼれしたんです。尾行してバイト先のバーを突き止めました。そして瀬戸さんを装って彼女を騙し、シャブを教えました。瀬戸さんの名前を使ったのは、外見が少しオレに似ている気がして。それに、実在する麻薬取締官なので、照会されてもバレないだろうと思ったからです……。2ヵ月留守にしたのはシャブの借金で追われて,地元の元カノのところへ匿ってもらっていたんです。彼女には拘置所から手紙を出して詫びを入れ、出所してから会いに行って許してもらいました。実はオレ、本気で惚れていたんです。出所した後、いまはある組織に所属しています。ですが、小分けと配達ばかりさせられてまともな金をくれません。それで何回か商品に手を付けてしまい、こんなざまに……。自分はヤクザにもシャブ屋にも向いていません。何をやっても“にせもの”です」
一方、彼女はこう語った。
「土下座して涙ながらに謝られているうちに、なんだか可愛そうになって許してしまいました。そしたら、いつのまにかこうなってしまって……。母からも叔母からも絶縁されています。大学も卒業目前だったのに、なんでこうなったのだろう。時々そう考えるけど,もう仕方がないですよね……」
我々は薬物事件を通じて多くの悲劇を見てきた。この男女のドラマもそのひとつだろう。シャブが絡むとこうなる。男も傷つくが、女はもっと傷つく。実に悲しい世界だ。
第1回【「潜入捜査で半月ほど留守にするけど心配するな」…美人女子大生をダマした「ニセ麻薬取締官」の呆れた手口】では、「ニセ取締官」がどのように女子大生と知り合い、恋仲となったかが明かされている。
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