「麻薬取締官」を騙った“チンピラ密売人”に惚れて…美貌の女子大生はなぜ“シャブ地獄”へと堕ちたのか

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「こんなことがあるのか……」

 それから4年が過ぎた頃、早朝にAから弱々しい声で電話があった。

「あの時はすみませんでした。本当にすみませんでした」

――おお、いつかの“にせもの”か。元気にしてるか?

「シャバには1年前に出てきました。すいません、実はお願いあるんです。自首させてほしいんです。ただ、いま動けなくて……」

――どうした? 怪我でもしているのか?

「はい、怪我をして知り合いの女のアパートに避難しています。ブツも少しあります」

 Aは、はっきりとは言わないが、シャブの関係でなにやら揉めて、助けを求めてきたのだろうと私は思った。

 我々はAから伝え聞いた知人のアパートを訪ねた。下町の路地奥にある、外階段が設置された昭和風のアパートだった。呼び鈴を押すと、恐る恐るといった感じで扉が開いた。

 次の瞬間、「えっ!なんで……」と私は絶句してしまった。その部屋に“彼女”がいたからだ。痩せ細り、少し病んで見えるが、かつてAに騙された彼女に間違いなかった。髪はボサボサで化粧っけは全くない。

「“指を持ってこい”と言われてます」

「ごめんね、ごめんなさい。実はあれから……」

 私は彼女の姿を見て一瞬固まったが、まずはAの怪我の状態を確認しなければならない。部屋の奥にはAとおぼしき男が横たわっている。我に返った私は「まぁ、いいから。話は後で聞く」と彼女を遮ってAに近づいた。顔全体が腫れあがり、鼻も半分つぶれていた。前歯は折れ,右の下唇も少し垂れ下がっていた。髪には血糊が付着している。左足も怪我しているようだ。そして何より、怯えていた。

「商売用のシャブを盗んでしまい、ボコボコにヤキを入れられました。“指を持ってこい”とも言われてます。ブツは少しですが、ここにあります。お願いします」

 女も懇願してきた。

「なんとかこの人を助けてください。このままだと殺されます。私もシャブ喰っているから一緒に連れて行って……」

 私たちは女の言葉に耳を疑った。それと同時になんとも言えない寂しさを覚えたのも事実だ。

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