出生率0.7の韓国より日本の少子化が“深刻”な理由 世界トップの「無子率」と「理想とのギャップ」

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「理想」とのギャップ

「この傾向も、意識調査から明らかになっています。例えば『理想の子どもの数』について、2020年に内閣府が実施した国際比較調査の結果があります。これによれば、世界的に減少傾向にある中で、日本は『2人』『3人』と回答した割合が比較的高く、平均すると理想の子どもの数は『2.1人』。フランスやスウェーデン、ドイツと比べても高い水準であることがわかります」

 日本人の「子どもは2人以上ほしい」という傾向がはっきりと見られる。

「その一方で、日本の出生率は世界と比べて低いという現実がある。理想の子どもの数と現実の出生率を比べてみると、そのギャップは日本が飛びぬけています。『2人目もほしいけど諦めようか……』という層が、日本では多いことがおわかりいただけるかと思います」

「世界一の無子率」に加え、「理想とする数の子どもを産めない」という大きなギャップがあるのだから、これでは少子化も進んで然るべきというわけか。

「もっとも、世界に比べて日本が効果的な対策を講じてこなかったことも、データからよくわかります。例えば、フランスをはじめ出生率の低いヨーロッパ各国でも、一時的には出生率の増加が見られるなど、効果のある少子化対策を行った“形跡”がある。それに対して、ここまで右肩下がりになっている日本の場合、無策だと指摘されても仕方ないでしょう」

“東高西低”から“西高東低”に

 だからこそ、対策の合理性を見極める必要があると、本川氏は指摘する。

「多様な少子化対策を打つこと自体は良いことだと思いますが、日本には良くも悪くも、これだけはっきりしたデータがそろっているわけですから、その分析にもっと力を割いて、合理的なお金のかけ方を考えていく必要があるのではないでしょうか。例えば、戦前の出生率は東北など『東』に行くほど高く、沖縄など『西』に行くほど低いという“東高西低”の傾向がありました。ところが戦後になると、“西高東低”と逆転している。こうしたデータについて人口学者等に調査を依頼すれば、何かヒントになることもあるかもしれない。何となく効果がありそうな政策ではなく、せっかくあるデータを合理的に活用していくことこそ、求められている対策ではないかと思うのです」

 とはいえ、と続ける。

「ここまで高齢化が進むと、政治家も有権者として相手にすべきは高齢者ということになり、なかなか少子化対策に力を入れられない事情もあるのでしょう。この構造が変わらない以上、人口が減少していく事実を受け入れ、その中で豊かに暮らしていける道を探るべきフェーズに入っているのかもしれません」

デイリー新潮編集部

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