山﨑福也は日ハムへ…「巨人」はなぜ選ばれなくなったのか 元「一軍戦略コーチ」が分析する“万年Bクラス”チーム躍進のワケ
3連覇を果たしたオリックスから学ぶべきもの
今、12球団のなかでトップレベルの実力を誇るのは、オリックスと言っていい。走攻守ともにバランスがとれていて、とくに投手力は12球団でも頭ひとつ抜けていると言っても過言ではない。
今から4年前までのオリックスは、12球団のなかで人気・実力ともに劣ると見られていた。イチローがメジャーに挑戦した2001年以降の成績は、Aクラスが2回(08年と14年の2位)、あとはすべてBクラスである(4位5回、5位4回、6位9回)。
また2016年からの5年間のチーム成績は、6位、4位、4位、6位、6位と下位を低迷していた。
そうした時代を経て、2021年からのパ・リーグ3連覇である。突如として迎えた感のあるオリックスの黄金期にうれしさと同時に戸惑いを見せているオリックスファンも多いかもしれない。
だが、これはチーム戦略が見事に実を結んだ結果である。私が考えるところでは、福良淳一さんがオリックスの監督を退いてGM兼チーム編成部長になったあたりから結果が出だしたと考えている。
日本ハムとオリックスの共通点
福良さんは2013年からオリックスのヘッドコーチ、16年から3年間、監督を務めたが、それ以前の05年から12年までの8年間は、指導者として北海道日本ハムに在籍していた。
このときチームの強化方針を学んだことが大きかった。今もそうだが、日本ハムは2004年に北海道に本拠地を移転させてからは、ドラフトで獲った選手を成長させてチームの中心選手に据えていく「育成型のチーム」を目指した。
この間に獲ったのはダルビッシュ有(2004年ドラフト1位)、陽岱鋼(2005年ドラフト1位)、吉川光夫(2006年ドラフト1位)、中田翔(2007年ドラフト1位)、大谷翔平(2012年ドラフト1位)と高卒の選手を1位指名し、その後のチームの躍進に大きく貢献した。
これと同じ方針をオリックスも採った。若月健矢(2013年ドラフト3位)、宗佑麿(2014年ドラフト2位)、山本由伸(2016年ドラフト4位)、宮城大弥(2019年ドラフト1位)、紅林弘太郎(同年ドラフト2位)、山下舜平大(2020年ドラフト1位)と、オリックスの優勝に貢献したのは、彼ら高卒選手の存在が大きい。
日本ハムとオリックスに共通しているのは、「お金のかかるFAに頼らず、優秀な素質を持った高卒の選手を自前で育てる」という方法をとっていることである。実はここに、選手育成のヒントが詰まっているように思える。
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この記事の後編では、引き続き『だから、野球は難しい』(扶桑社新書)より、阿部新監督“新生巨人”に求められるポイントをご紹介する。