「認知症」行方不明者が「1万9000人突破」の衝撃 専門家が明かす「大病と無縁で“健康”に見える高齢者ほど危ない」

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「介護ネグレクト」の闇

 現役のケアマネージャーがこう話す。

「認知症を患っている高齢者のお世話はすごく手のかかるケースが少なくありません。人によっては暴力的になり、自分の便を部屋中に撒き散らすなんてことも。家族が意思疎通を図ろうにも『黙れ』や『バカ』などと暴言を吐かれ、そのうち家族側が疲弊していき、当人の動向に“無関心”になっていくケースを複数目にしてきました。実際、食事も満足に摂っていないために痩せこけ、お風呂にもしばらく入っていないことで皮膚の大半が湿疹に覆われた高齢の認知症患者を知っています」

 いわゆる「介護ネグレクト」の状態というが、家族側の疲労困憊が理由となるだけでなく、相続で揉めている家庭内でもしばしば見られるケースという。

「同居する高齢の父親の姿が見えなくなっても、実際に警察へ相談に行ったのは2~3日後だったという事例を知っています。ただ家族と同居している高齢者はまだ“異変”が起きれば気づかれやすい存在です。むしろ本当に注意が必要なのは独居の高齢者。忽然と姿を消した認知症疑いの独居高齢者の部屋に入ったことがありますが、足の踏み場もないほどモノが散乱した“ゴミ屋敷”と化していました」(同)

「健康な高齢者ほど危ない」

 前出の岡田氏がこう補足する。

「たとえば同じ認知症でも脳卒中を起こした後などに発症すれば、そのまま施設に入所となるケースは珍しくありません。しかし、そういった大きな病気とは無縁で“健康”に見える高齢者ほど本人や家族も気づかないまま認知症を発症し、徐々に重症化――。表面化しにくい分だけ、こちらのほうが深刻な面があります。認知症と認識されないと周囲との軋轢は深まるばかりで、また行方が分からなくなっても切迫した事態と受け止められないことがあるからです」(前出・岡田氏)

 問題の背景にひそむ“ステルス認知症”。今後も「認知症行方不明者」は増加の一途をたどると見られ、国が対策に乗り出すことが望まれている。

デイリー新潮編集部

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