ジャニーズ取材歴50年の作家が読み解く「EXILE」「AKB48」ヒットの要因と源流

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 ジャニー喜多川氏の性加害問題を経て、何とかリスタートへと漕ぎつけたSTARTO ENTERTAINMENT社(旧ジャニーズ事務所)。そんな同社を50年にもわたって取材し続けた作家の小菅宏氏が、独自の目線でEXILE、AKB48のヒットの要因と、日本芸能史の変遷を語った。(小菅宏/作家)

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仏(フランス)人が見る日本芸能界

 10年ほど前のことである。

「この国(日本)のショービジネスの出演者は、なぜ、ローティーン(低年齢層)が多いのか?」

 ズバリ言う。当時の日本の芸能事情を取材したフランスのTVプロデューサーの発言を報道枠で聴き、私は違和感を抱いた。その発言の言外に、稚拙、という侮蔑が滲んでいたのだ。彼の批判対象は過去の日本芸能界の常識を疑う秋元康が主導するAKB48の女性群団、独創的な発想のHIRO(ヒロ/1969年6月1日生まれ)が引っ張る男性ボーカル&ダンス・ユニットEXILE(エグザイル)一派、加えて当時活動を活発化するジャニーズを指すのは明らか。私が彼らを異能群団と称するのは、日本芸能界の芸歴優先という陳腐な習慣を打ち壊す「常識を疑う」の革新で誕生した群団であるからだ。

 殊にEXILEのHIROと、AKB48の秋元康には、旧弊を打ち壊す新芸能主義と呼べる「発想」で、時代を動かす活力があった。彼らは旧態依然の芸歴で、その座を譲らない日本芸能界の重い扉を開いた当事者だ。そこで私は当該の異能群団に偏見のない立場から、現代日本の音楽界での彼らの成り立ちを検証した。

新感覚派「EXILEグループ」

 EXILEは、1999年にZOO(ズー)のメンバーを経たHIROの存在が絶対だ。彼の発想には歌手と踊り手の存在を合体し、各メンバーを人格化する戦略が明白だ。要は過去の成り立ちを壊す発想だ。ひたすら前例を踏襲する旧芸能界の習わしを覆す集団劇を造形する。過去の全否定ではなく、別角度から構築する戦略。具体的には、バックダンサーに「人格」の存在感を持たせた意味は革新的だ。HIROは欧米の物真似を鎮静化させ、日本舞踊的な型を取り入れる様態(パフォーマンス)を開拓した。当初のJ Soul Brothers結成後にEXILEと代替えし、現状破壊のムーブメントを肉体的に現実化した。

 その正体は日本のステージショーで鑑賞し得なかった「和洋融合」で、前例を倣う身内感覚の日本芸能界を沈黙させる。容赦なく過去を振り切る成果は切れのいいテンポで新時代を刻む。人格を持つダンサーを背景に、圧倒的にタフなボーカルとの調和を実現する新戦術。ダブルボーカルの声量の高低に、強弱を織り込む音楽性の仕掛けは、決闘を思わせる緊張感を表現する迫力がある。

 圧巻はツインボーカルのシャウトに負けない個性(技量)を生かすバックダンサーの躍動だ。過去の飾り的なダンサーを拒む新たなステージとは、芸能界の常識を切り捨てる勇気と感じる。まさに物真似と冗長なパフォーマンスを超える感性の意味でだ。数年前、彼らは国の公的機関からリクエストされ、皇族の前で存在をアピールする場を与えられた。

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