山田孝之&仲野太賀主演…60年の時を経て公開される「集団抗争時代劇」の重要な意味

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日本人が時代劇を見なくなったのは……

 事情はテレビでも同じだ。もともと、NHKは史実を元にした時代劇である大河ドラマが朝の連続テレビ小説と並んで看板枠として君臨している。しかし、もはや、テレビ各局は、BSも含めNHK以外は新作の時代劇制作に消極的だ。

「現代劇に比べ、時代劇は所作、殺陣、さらには乗馬など、覚えなければいけないことが多過ぎます。何より制作費がかかるので、各局は制作にノリ気ではありません」(放送担当記者)

 その結果、時代劇ファンは歴史小説を読んだり、BS・CSの時代劇専門チャンネルや動画配信サービスを楽しんだりするのが習慣になった。もっともそうした“隠れファン”が劇場に足を向けるだろうと、これまでにも三池崇史監督の『十三人の刺客』(10年)、三谷幸喜監督の『清洲会議』(13年)、原田眞人監督の『関ヶ原』(17年)など、善戦した作品もあるが、時代劇映画は集客に苦戦しているのが実情だ。

「東映が70周年記念作品として木村拓哉(51)主演で送り出した『レジェンド&バタフライ』(23年)は、製作費20億円の超大作でかなり期待されましたが、興収24.7億円を記録したにもかかわらず大赤字でした。昔からの時代劇ファンからすれば、単純に物足りなさを感じ、わざわざ時間をかけて劇場に足を運び、さらに、決して安くはないチケット代を支払うことに『そこまでしたいとは思わない』という声が聞かれました」(芸能記者)

 昔は、祖父母と同居している家族が多く、祖父母が見ていたから幼少期から時代劇を見る、という若い人も多かったはず。それが今や、核家族が増え、時代劇と全く接点がない若者が多い。

「それに、日本史の授業は昔に比べて、明治時代以降から近現代史を重視する流れになっています。大河ドラマで描かれる時代の世界観にまったく興味のない人が増加傾向にあるのでは。そもそも、若者のテレビ離れも加速する一方なので、ますます歴史や時代劇との接点がなくなっている。これからは製作サイドも色々と考えないといけないでしょうね」(前出・映画ライター)

 こうした状況だけに、「十一人の賊軍」に対する期待はかなりのものだという。

「山田も仲野も演者側としては成功していますが、もともと、映画が大好きなので、“作る側”の目線も持っています。その2人とヒットメーカーの白石監督が組むのですから、王道の時代劇でありながら、集客に必要なエンタメ的要素も取り込まれた作品になりそうです。もし、この作品がコケるようなことがあれば、さらに時代劇映画の衰退が進んでしまうでしょう」(先の映画業界関係者)

 いろいろなものを背負った、責任重大な1作になりそうだ。

デイリー新潮編集部

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