山田孝之&仲野太賀主演…60年の時を経て公開される「集団抗争時代劇」の重要な意味

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鬼平も忠臣蔵も当たらず……

 今年2月にはムロツヨシ(48)主演の「身代わり忠臣蔵」が公開され、5月には、草なぎ剛(49)主演の「碁盤斬り」と、歌舞伎俳優・松本幸四郎(51)主演の「鬼平犯科帳 血闘」の2作が公開されたが、いずれも、興行収入は伸び悩んでいる。

「『身代わり-』は時代劇『忠臣蔵』をモチーフに、吉良上野介が松之大廊下での刃傷沙汰で死亡し、彼にそっくりな弟が替え玉に仕立て上げられたことで起こる騒動を描きましたが、興収は5億円に届かず。『鬼平』は5月10日に公開、『国内映画ランキング』(興行通信社調べ)では初登場5位でも、翌週はトップ10圏外に転落。『碁盤斬り』が同ランキングに初登場4位で、翌週は6位にダウンしました。2作品ともヒットの基準である興収10億に届きませんでした。最近のランキングはアニメ、もしくはアニメの実写作品、そして、洋画の大作が席巻しています。大人が鑑賞できる作品がないので、時代劇映画はもっと稼げると思ったのですがそうはなりませんでした」(映画ライター)

「忠臣蔵」を観に来るファンは、赤穂浪士の討ち入りという本筋を求めている。そこからかなり脱線した「身代わり~」はチャレンジングではあったものの、失敗してしまった。

「一方の『鬼平』は、いずれも幸四郎にとっては歌舞伎界の大先輩である、故二代目中村吉右衛門さんと、その父で初代松本白鸚(八代目松本幸四郎)さん親子2代でのハマリ役でした。作品の知名度も抜群なだけに、大規模公開に踏み切ったものの集客に苦戦。幸四郎さんのスケジュールの都合でPRにかけられる時間が限られており、まだまだ幸四郎版・鬼平が時代劇ファンに浸透していなかったことが露呈してしまったと思われます」(同)

 これまでに公開された邦画の興行収入トップ100に、日本を舞台にした時代劇映画でランクインしているのは、主演に起用された渡辺謙(64)が急性骨髄性白血病に倒れ降板し、榎木孝明(68)に交代、興収92億円を記録した「天と地と」(1990年)。52.2億円を記録した佐藤健(35)主演で、人気コミックを実写化したシリーズ「るろうに剣心 京都大火編」(14年)。同じくコミック実写化で46.1億円を記録した小栗旬(41)主演の「信長協奏曲」(16年)、45.9億円を記録した故黒沢明監督の「影武者」(1980年)の4作品のみ。

 ちなみに、洋画も含めた国内興収トップ100では、トム・クルーズ(61)が主演し渡辺や真田広之(63)ら日本人キャストも出演した「ラスト サムライ」(2003年)が137億円で8位にランクインしている。

「『るろうに剣心』は12年から21年まで5作が公開され、5作の累計で195億円を記録する大ヒット作となりました。とはいえ、フジテレビ系のドラマがヒットして映画化された『信長協奏曲』にしても、もともと、原作からの根強いファンがいたから数字が伸びたのです。映画化といっても原作通りにやることで、必ずしも史実に忠実でなくてもいいし、演じる役者はそのキャラに寄せるのが役作りの前提なので、やりやすい。それに、比べると、オリジナルの時代劇作品は作るのに手間暇がかかる割に、なかなか数字が伸びないのが切実な現状なのです」(同)

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