「大宅文庫」でケタ違いに検索された記事は「時の総理を追い詰めた歴史的レポート」…では、ここに来て“激減”しているのはどんな記事か?

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第1回【雑誌の殿堂「大宅文庫」が“グーグルを先取りした”と称される理由…なぜ大宅壮一は「つまらない記事」の所蔵にこだわったのか】からの続き

 明治時代からの雑誌が所蔵されている「大宅壮一文庫」。ここでは雑誌が発売されると、スタッフがひとつひとつの記事に索引をつけてゆく。同館の索引チーム・編集委員の小林恭子さんは、索引作成のためにさまざまな雑誌に日々目を通し、また一方で利用者のニーズの変化も目の当たりにしてきた。では、そんな大宅文庫において、これまで多数回検索されたのは、一体どんな記事だったのだろうか。(全2回のうち「第2回」)【高橋ユキ/ノンフィクションライター】

索引カードが黒くなるほど

 先に答えを明かせば、同館で最も検索された雑誌記事のひとつは「田中角栄研究」だという。小林さんによれば、

「1974年11月号の『文藝春秋』に立花隆さんが寄稿した記事になります。当時はまだパソコンでの索引検索は始まっておらず、スタッフが手書きで記入し、整理したカードから、利用者が記事を探して閲覧申請を出すという流れでした。これが当時の田中角栄の記事索引カードが収められたケースですが、とにかくカードの数が多い。しかも、カードが黒くなるぐらい調べに来る方も多かったのだと思います。この記事もすごく読まれたようで、著者である立花さんも、インタビューで“大宅文庫で田中角栄に関する記事を全部複写し、それを土台にして取材を重ねた”とおっしゃっていました」

 田中角栄の金権政治をつまびらかにした立花によるこの記事は、のちの首相退陣、ロッキード事件摘発のきっかけとなった。

 それ以外に読まれる記事にはこんな傾向があるという。

「やはり世間を騒がせた出来事があると、関連記事が読まれますね。たとえば東京オリンピックで小山田圭吾氏が批判されるきっかけとなった『クイックジャパン』の記事。各報道機関が一斉に元記事を入手するために資料請求されます。もちろん旧ジャニーズ事務所のジャニー喜多川氏による性加害がクローズアップされた時もそうでした。『週刊文春』が25年以上前に展開したキャンペーンなどの一連の記事ですね。この件については、他誌が1960年代にも記事を出しているんですよ。それもよく読まれましたね」

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